第7章 無口な彼の譲れぬ主張 ~深い愛に溺れて~
そんな気はなかったが不意に首に赤い華を見つけ、妙に癪に障り
「こんな時でもなければ、君に近付けないのだが?」
処置が終わって離れようとしたみずきの手首を掴み自分の腕の中に誘う
『…炎柱様、お体に障ります。離して下さい』
煉獄の腕の中にいながらも冷静で意思の強い瞳が彼を射抜く
「…ふむ、この状況に動揺すらしないか。なかなか手強いな、君は」
スルリと腕から抜け出し
『…畏れ多い言葉です』
と言い放つみずきに
「君はやはり素晴らしい、たまらんな」
目を輝かせながら言われ、戸惑ってると
「…神凪、1つ聞きたいのだが」
『…何でしょうか?』
「君が冨岡を選んだ理由が知りたい」
あからさまに動揺するみずきに
「俺の腕に抱かれるより冨岡の話をする方が動揺する、か。やはり、手強いな」
『…り、理由など、別に良いじゃないですか』
「…俺がその答えに納得すると、君は思うのか?」
煉獄から静かだが計り知れない圧を感じ
『……義勇さんの、不器用ながらも密かにひたむきに努力をする姿に惹かれました』
昔を思い出すように話す
『初めて会ったのは私が入隊して初めての任務でした。義勇さんは2年目で同じ水の呼吸の隊士同士で合同任務でした』
懐かしむ目をしながら話す
『その任務は義勇さん以外は私を含めて入隊したての新人で構成されていました。鬼が複数いたので何人かに分かれて倒していきましたが…最後の一体は鬼自体はさほど強くありませんでしたが厄介な血鬼術を使う鬼で…皆、居場所を撹乱され1人、また1人と絶命して…いきました』
暗い表情になる
『そんな中、私は何とか残った仲間を助ける為に必死で技を出し続けました。全ての攻撃を凪ぐように……防戦一方だった私を助けてくれたのが義勇さんでした。遅れてすまない、と』
煉獄が食い入るように見詰める
『…一人で鬼を何体も倒していたのに、必死で駆けつけてくれて、あっという間に鬼の頸を斬りました。守るだけだった私とは比べ物にならないほど、強かった』
「そこで惚れたのか?」
みずきは静かに首を降った
『…その時は必死でそんな感情には行き着きませんでした。その後、何度か任務を重ね…少ない言葉を重ねるうちに自然と…好きになってしまいました』
「…では、何故その話を?」