第7章 無口な彼の譲れぬ主張 ~深い愛に溺れて~
『何か言いましたか?』
「いえ、何も~」
それよりと、胡蝶が続ける
「まだ誰の継子にもなってないそうですがどうしてですか~?」
『…何度も言ってますが私は柱の器ではありません』
「…みずきさんが何をそんなに頑なになってるのか分かりませんがあなたには素質がありますよ」
『皆さんに気にかけてもらってるのはありがたいですが、私の実力ではなく…性格が人の上に立つより誰かの手助けをする方が向いてるかと』
それは胡蝶も感じていた事だ
みずきは実力者だが合同任務の戦いの中では余程の事がない限り自分から攻撃はせず負傷した隊士の守り等に入る事が多い
最初は水の呼吸だから守りが多いのかと思っていたが単独任務ではしっかり鬼を斬れるのでどうやら性分のようだ
甲まで上り詰めたのに勿体ない気はしたが
確かにみずきが同行した任務は終始動きやすい
こちらがやり易いように配慮してくれる
何度も同じ任務についた胡蝶は勿論
戦わねー奴ァ、邪魔だァ!と文句を言う、あの不死川を黙らせるくらいに
「…そう言えば、この間は時透君と任務に行きましたよね?人に執着がない彼が珍しく、みずきさんだと任務しやすかったと呟いてましたよ~。これはまた継子か任務の同行指名きますよ」
至極、楽しそうな胡蝶とは裏腹にみずきは気が重そうだ
『私は自分に出来る事をしているだけなのですが…皆さんの手助けはしますが継子にはなりません』
珍しくはっきりした口調で言い切ると
『そろそろ、病室巡ってきますね』
と診察室を後にした
「…みずきさんは罪作り、ですね」
皆に認められ、求められてるのにあくまで手助けだけと言う
…冨岡さんはズルいです
普段、無口な癖に皆が欲しい物を手に入れる辺り本当に…
まぁ、いくら冨岡さんでも継子にはなってもらえないようだし…いい気味です
それに今日、これから起きるであろう出来事を予想してクスクス笑う胡蝶だった
ーーー
病室を一通り巡り、処置が終わると
胡蝶に軽く挨拶をして蝶屋敷を後にした
その時、やたら楽しそうな胡蝶の顔に一抹の不安が過るが気にしない事にした
今から任務先に向かえば十分、間に合う
しばらく早駆けをしていると
少し先に同じように早駆けする炎柱の姿を見つける