第7章 無口な彼の譲れぬ主張 ~深い愛に溺れて~
考え事をしていたら、蝶屋敷を通り過ぎそうになってしまい慌てて止まる
いけない、集中しなきゃ
『…神凪です、失礼します』
玄関で声をかけると
「これはみずきさん、奥でしのぶ様がお待ちです」
アオイが出迎えてくれて
どうぞと、中に促された
『アオイちゃん、こんにちは。お邪魔しますね』
「…私はみずきさんを蝶屋敷の一員だと思っています。どうぞ、もっと気楽にして下さいね」
表情は硬いながらも、アオイの気持ちはひしひしと伝わってくる
『ありがとう、アオイちゃん』
柔らかな笑顔のみずきにアオイもつられて少し笑うと
「いつもの診察室にしのぶ様がいます」
と手短に説明すると忙しいのか、アオイは足早にその場を後にした
みずきは診察室に行き、軽くノックをすると
中からどうぞ~と、聞こえてきたので扉を開ける
『失礼します』
「みずきさん、お待ちしてましたよ~」
『お待たせしてしまいすみません』
「いえ、時間通りですから問題ありませんよ」
すると薬や包帯が入った手桶を渡されて
「今回も手伝って頂いて助かります。いつも通り、お願い出来ますか?」
『分かりました、病室巡ってきますね』
「…みずきさん、巡る前に首元は隠した方が良いかと」
ハッとして髪の毛で首を隠すと
「…冨岡さんは随分と嫉妬深いのですね~」
少し黒い笑みを浮かべる胡蝶
『…私も少し意外でした』
「普段のすました冨岡さんからは想像出来ませんよね~」
『…はい、今日もこの後任務なのですが…その、炎柱様と任務で…』
「あぁ、それでそんなものをつけられてしまったのですね~」
さらに黒い笑みになると
「そんなだから皆に嫌われるんですよ、冨岡さん」
『…嫌われてるんですか?義勇さん』
「えぇ、でも仕方ないですね~。只でさえ言葉が少なくて不興を買っていたのに、その上皆さんが好きなみずきさんと恋仲になったのですから~」
余計に嫌われてますよと言われ
『…皆さんが私を……好き?』
「……もしや、気付いていなかったのですか?」
『…音柱様に似たような事を言われましたがそんな訳ないと』
「…あんなに分かりやすかったのに。これは不死川さんや煉獄さんは可哀想ですね」
胡蝶は俯き加減で静かに呟いた