第1章 無口が放つ最高の殺し文句
『確かにあまり表情は、変わらないと思いますが…』
それにしてもいくらなんでももう少し変化があってもいいのでは?と思ってしまう
そんな事を考えていたら、突然
「1つ、伝えたい事がある」
冨岡の顔から色気こそ消えたが、真剣な表情に変わり
それはそれで身構えるみずき
「…正直、これを伝えたら、お前がどんな反応をするかわからない」
少し間があき
「…だが、俺の人生を変えてくれたきっかけでもある。だから、聞いてほしい。」
と言われたら聞くしかない
返事をする変わりに頷いてみせると
冨岡は口を開いた
「…俺が拾壱ノ型を作ったのは、知っているな?」
『はい』
「何故、その型が出来たか……分かるか?」
『…わ、わかりません』
「…神凪の刀捌きを見たからだ」
『…え?』
すると、思い出すように冨岡が天を仰ぐ
「あれは初めて合同任務をした時の事」
え、そんな前から説明…するんだ
「同じ呼吸を使う者は沢山いた。だから気に止めた事はなかったんだが…」
そこで視線が合う
「神凪、お前の流麗な、舞のような刀捌きを見て思わず見惚れた」
心拍数が上がる
「無駄がなく、全てを凪ぐ、そんな動きだった」
冨岡の深海のような瞳に吸い込まれる
「だから、自分なりに再現した。…それが拾壱ノ型《凪》だ」
嘘…そんな、水柱になるような人が私の事を?
「……この意味が、分かるか?」
熱い視線を向ける、冨岡の壮絶な色気と
とんでもない最高の殺し文句に思考回路が完全に停止した
『…わ、かりません』
すると少しムッとしたような顔で
「本当に、わからないのか?俺がお前の事だけを考え…お前の名をとった型まで編み出したのにか?」
言いながら、冨岡の手が頬に伸びる
「…お前の全てを貰い受けたい」
心臓が、止まりそう
「お前の…操もこれからの時間も人生、全てだ」
体が近付く
「添い遂げるなら神凪以外、考えられない。恋仲になり、ゆくゆくは夫婦になりたい。…返事を聞かせてほしい、出来れば今すぐにだ」
あくまで考える時間はくれないらしい
動け、私の口っ
『…わ、私がお慕い、してるのは…冨岡さん、だけです。私を、その…望んでくれるなら、こんな幸せは、ありません…』