第1章 無口が放つ最高の殺し文句
「オイ、お前ら。俺の事は派手に無視か?」
その声にみずきはビクッと反応し
冨岡は邪魔立てするなと不機嫌を露にした
「なんだよ、なんだよ!結果的に俺のおかげで今の状況なのにその態度かよー。本当、可愛くねーな」
「宇髄、お前の真意が見えない」
冨岡は静かに続けた
「お前が神凪を本気で好きなら、俺を無視して事を起こす事も出来るように見えたが?」
だから、牽制したのだがあの距離だ。
宇髄が本気を出せば間に合わなかった。
「…俺が優先すんのは好きな女の気持ちだ、そりゃお前に持ってかれるっつーのは派手につまんねーけどな!」
と、吐き捨てるように言うと踵を返し
「あとは二人で話し合えよ。さっさと恋仲になっちまえ!」
そう言ったと思ったら、宇髄は消えていた
しばらく沈黙が続いたが
徐に冨岡がみずきを横抱きにしたと思ったら駈け足で動き始めた
『ちょ、どこに行くんですか?!』
「俺の屋敷だ、もう誰にも邪魔されたくない。」
冨岡の静かな圧を感じ、思わず口をつぐんだ
しばらく移動すると大きな屋敷が見え
冨岡が足早に玄関に入り、少し乱暴に施錠した
みずきはその音に思わず体を震わせた
「…そんなに警戒するな、何もしない」
今はな、と心で言いながらみずきを落ち着かせる
『……私の気持ちはさっき聞かれたんですよね?』
「聞いたが直接、聞きたいと言ったはずだ。……言えないなら、言わせるようにするが…どうする?」
そう言うと冨岡はみずきを壁に押しやり、顔の横に手をつき僅かに口の端を上げ、恐ろしいほどの色気を醸し出していた
あれ?何もしないって言っ…
ダメだ、これ何をされるか、わからない
今、何かされたら爆発してしまう
またも意を決して口を開いた
『………ずっと前から、お慕い、しています。意識し過ぎて、稽古や鍛練が身に入らなそうで継子の話も断ってしまい、も、申し訳ありませんでした。』
冨岡は食い入るように見つめてくる。
そして
「俺もお前が好きだ、ずっと…前から」
『ずっと前から…ですか?』
「あぁ、最初に会った時からずっと」
『う、嘘?!そんな素振り、は…』
「…俺が顔に出ないのは知ってるだろ」