第6章 吸血鬼に甘く奪われて…(炭治郎の場合)
今日、一緒の任務につくのは珍しく「人」らしい
俺達、吸血鬼と「人」は基本は別任務
急を要する任務でなければ、吸血鬼の隊士は「人」と同じ任務にはつかない
(聞いたら前に何か問題が起きたようで再発防止?って説明されたな)
今回は急な案件ですぐに動けるのが俺とその人だけだったらしいけど
「人」で甲までいった凄い女性らしいけど、どんな方なんだろう?
と考えていると待ち合わせの場所に人影があり
そこからキツく鼻につく香を纏う人が静かに佇んでいた
この距離で匂うって…と思いながら
早足で向かい
「遅れてしまいすみません!今回、一緒に任務につく竈門炭治郎です!」
近付くとほんの微かに藤の花の香りがして、顔は化粧はキツめにしてるが綺麗な人だ
『時間通りなので大丈夫です。私は神凪みずき。今回は私で申し訳ないけど協力してもらえると助かります。よろしくお願いします、炭治郎さん』
階級が上なのに何故か自分に気を遣う話し方をするみずきに違和感を覚え、炭治郎は思わず匂いを嗅ぐ
キツい香で隠れた本心を探る
あ、そういう事か
「…あの、俺、偏見とかないから気を遣わないで下さい!あなたは甲です、階級も経験も俺の方が下です。どうぞ、指示して下さい、頑張りますので!」
みずきは驚き目を見開く
『……もしかして、五感のどれかがかなり凄いのかな?』
「はい、他の吸血鬼より嗅覚はかなりいいと思います」
『…そっか、じゃあこの香、凄くキツいでしょ?ごめんなさい…』
申し訳なさそうに手をパタパタさせる
「…その香は本心を探られない為、ですか?」
『うーん、それもあるけど…時間ないから移動しながらでいいかな?』
と目的地の方を指差し困ったような顔をするみずきに
「…あ、はい、すみません!」
言いながら早駆けを始める
そこで驚く
この人、速い…!
階級もかなり上だし当たり前と言われればそうだけど
普通は吸血鬼の方が基礎的な所はどうしても上だ
でも、この人はやっぱり甲になる人だ
顔色も変えず、呼吸も乱さず俺より数歩先を軽々と移動する
熟練した雷の呼吸の使い手だ
『炭治郎君…聞いてる?』
ふいにみずきが問うと
「…あ、すみません!考え事しちゃってました!」
『…さっきの話ね』