第1章 無口が放つ最高の殺し文句
「お、逃げられちまったなー。さすがの身のこなしだ」
距離をおいた事で少し冷静になり
『…宇髄様のお気持ちを真剣に受け止めずすみませんでした。ですが、先ほど話した通り私は水柱様以外の方は考えられません』
「お、やっと名前呼んだな!天元でもいいんだぜ?」
と軽口をきいた後
「じゃあ、なおのこと何で冨岡の継子にならねーんだ?」
『先ほども言いましたが、本当に柱の器ではありません、分不相応だと思っています。私は人の上に立つより誰かの手助けをする方が性に合っています。…それに、水柱様とうまく話せないのです。その、意識してしまって…ただでさえ、話さない方なのになおのこと会話が続きません!』
すると宇髄はとびきりのニヤつき顔で
「だってよ!良かったなー、冨岡っ!いつまで隠れながら俺にだけ分かるように牽制してるつもりだ?」
と私の後ろに向かって言い放った
え?今なんて?
すると、徐に後ろに気配を感じおそるおそる振り向くと
「……神凪」
と少し申し訳なさそうに冨岡が立っていた
『…あ、あ、あの、いつから聞いて、たんですか?』
「……おそらく最初から、聞いてはいた」
顔から火が出るほど、真っ赤になり逃げ出そうとするみずきを涼しい顔で冨岡が捕えまる
宇髄に分かりやすく後ろから抱き寄せ首元に顔を寄せ威嚇する
『は、は、離して下さい!ひどいです、盗み聞きなんてっ…!』
あばれるみずきを宥めるように抱き竦めながら
「わざとではない、たまたま二人でいるのが見えた。…気になって様子見だけするつもりだったが」
そこで区切られ、思わず視線が合う
「……さっきの話は、本当か?」
どれが?
何が?!
もうわからない、恥ずかしい、誰かじゃないけど穴があったら入りたいっ!
『…何の事か、分かりませんっ』
「とぼけても、無駄だ。ちゃんと聞こえていた。」
苦し紛れに顔を背けながら
『聞こえていたのなら、お分かりでしょ?!わざわざ聞かなくてもっ…んっ!』
人差し指を唇に添えられ、遮られてしまう。
「直接、聞きたい。…ダメか?」
捨てられた子犬のような顔を向けられ、許容範囲を越えそうになった時