第5章 吸血鬼に甘く奪われて…(無一郎の場合)
今まで血を美味しそうなんて思った事ないのに
何でみずきの血は美味しそうって思うんだろ?
無一郎がこちらを凝視しながら、口許を手で覆う姿に気付いたみずきは諸々、察した
『…私の血が必要ですか?』
その言葉にピクリとし、背中を向ける無一郎
「…君、無防備な発言止めた方がいいよ?僕はどこも怪我してないし、血鬼術もかかってないから必要ない」
『では何故、口許を隠しながら背中を向けるのですか?……牙が出る程、飢えているのでは?』
「君に判断しろって誰が言ったの?柱の僕が決めるからもう黙って?もうすぐ隠が来るから治療してもらいなよ」
話ながらもみずきから漂う甘い血の香りに目眩がしてくる
あれ?前に似たような話聞いたかも…
その時はどうでもいいや、僕には関係ないって思ってすっかり忘れてたけど
今、冨岡さんと同じ状況だよね?
チラリとみずきを盗み見ると
心配そうにこちらを見てくる視線とぶつかる
『…霞柱様、大丈夫ですか?』
「…君、自分の心配したら?目の前に血を吸う化け物がいるのに随分、悠長だね」
『…霞柱様は化け物ではありません。鬼から人を救う立派な人です』
「…今も君の血を飲み干したくて仕方ないと思ってるのに?」
『…必要ならどうぞ、私を糧にして下さい』
負傷した腕を差し出しながら、慈愛を湛えた瞳を向けられ
「……何で我慢してるのにそういう事言うの?僕、生き血を吸った事ないから、どうなるか分からないんだよ?」
急に甘えん坊な子供のような表情になり戸惑う無一郎に一瞬、面を食らうが
『…大丈夫です、霞柱様は人を無駄に傷付けたりしません。あなたが飢えて苦しんでるのに放っておくなんて、私には出来ません』
「…みずき、男を知らないでしょ?」
急にとんでもない事を聞かれ、思わず目を見開きむせる
『…ゲホッ…ンンッ!…た、確かに、そうですが』
「…血を吸って興奮するとまぐわいたくなるんだって。こんな事で操、失くしていいの?」
好きな人に操立てしたら?と、また背中を向けられる
少し間が空き
『…私は霞柱に懸想を抱いて、います…』
「……僕の事、好きなの?」
振り返りこちらを見る無一郎は大きな目をパチクリする
『…霞柱は覚えてないかもしれませんが、私は同じ最終選別にいました』