第5章 吸血鬼に甘く奪われて…(無一郎の場合)
はあ、この体質、面倒臭いな…
任務の度に胡蝶さんから渡されるアレ、美味しくないからいらないんだけど
飲まないでもし飢餓状態になったら、シャレにならないから飲むけどさ
でも、正直味気ないし、本当にいらない…
任務の度に飲むので流石の無一郎も忘れられないようだ
その日は急ぎの任務が入って向かったが先に向かった隊士は全滅だった
運が悪かったね、階級が低いからやられちゃったか
対峙すると下弦の鬼に近いが所詮、雑魚鬼で難無く頸を切った
…大した事なかったな、こんなのにやられちゃうようじゃ今の鬼殺隊の底が知れるよ
まあ、大半は普通の人間だし仕方ないかな?
任務が終わり戻る中
茫洋とした表情のまま歩いていると
ふと鼻を掠める香りに気付く
「……これ、何の香り?」
今まで嗅いだ事のない香りに誘われてそちらに向かうと
森の奥にある一軒の家で争う声が聞こえた
耳を澄ますと
鬼と隊士が戦っているようだった
「…手こずってる。加勢した方がいいかな?」
言うや否や、素早くその家に入り
鬼の姿を捉えると鬼の目に下弦と刻まれていた
素早く呼吸を使い、鬼の頸を目掛けて刀を振るうが
既の所で躱される
一瞬、驚くが瞬時に反応し、反撃を繰り出す鬼を難無く避け刀が頸に罹りそのまま胴から離れた
消滅するのを一瞥し
「…君、大丈夫?」
戦って負傷したのか片膝をつき左腕から血を流す女隊士
『…はい、霞柱様にお見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ない』
面目次第もありませんと頭を下げる
「名前と階級は?」
『…神凪みずきと申します、階級は乙です』
「さっきの鬼は下弦だったから仕方ないんじゃない?よく一人で耐えられたね」
話ながら、無一郎は自分の異変に気付く
…あれ?何でこんなに血が吸いたいんだろう?
鬼の血鬼術か?
違う、さっきの香りだ…
ふと負傷したみずきに目を向ける
先ほど森で感じた香りが漂う
負傷してないし、血鬼術も多分掛かってない
なのに、この甘い香りに飢餓感を覚え
無一郎は思わず牙が出てしまい口許を手で覆う
みずきの血、美味しそうだな