第4章 吸血鬼に甘く奪われて…(義勇の場合)
俺は一体、何をしている?
腕を振りほどいて、走り去れば2度と会う事もない
なのに俺は何故、躊躇する?
香りが気になり、考えがまとまらない
そこでふと前に胡蝶から聞いた話を思い出す
(私達は基本、生き血を摂取しなくても生きていられます。輸血パックで事足ります。ですが、稀に運命の相手に出会ってしまうとその飢えに抗えないそうです。まあ、私はまだ会った事ありませんし、宇髄さんは3人もいますから信憑性には欠けますが)
まさかな
いやしかし、それだと辻褄が合う
輸血パックを摂取していて、大怪我もしてない、血鬼術もかかってないのに突然の飢餓感
そこに現れた女
最初は稀血だからかと思ったがよく考えれば、前に稀血の人間は何人か助けたがこんな事は1度もない
自分の中で答えが出ると
「…名は、なんと言う?」
無言だった冨岡が急に口を開いた為
少し戸惑いながらも
『…申し遅れました。私、神凪みずきと申します』
「…冨岡義勇だ。みずき、どうやらお前は俺の運命らしい」
突然の発言にみずきは目を見開く
『…運命、ですか?』
「そうだ、辻褄が合う」
何の?と聞きたいが義勇の顔が真剣でちゃんと話そうとしているから黙って聞く
「…稀血だな?」
『…はい、助けて頂いた鬼狩り様がそう言ってこれを持っていなさいと』
帯についた匂袋をかざす
「…俺は最初、お前が稀血だから餓えたのかと思った」
静かに続ける
「だが、前に稀血の者を助けた事はあるがこんな飢えは感じなかった。そもそも、負傷もしてなければ血鬼術もかかっていない。」
視線が合う
「…俺は今日、血を欲するような事は何もない。だが、今も…お前の血を吸いたい。」
首筋に義勇の指が這う
手首より首から吸いたいと暗に示される
ピクリとみずきが反応すると
「……俺が怖いか?」
『…いえ、怖くありません。むしろ、最初にお見かけした時から…抗いがたいほど惹かれています』
「抗いがたい、か。…ふ、やはり運命という事か」
義勇は繋いだ手に力を込める
「…俺は生き血を吸うのは初めてだ。正直、吸ったらどうなるか分からない。…性的な衝動もありえる。」
深海の色をしたギラリと光る目にみずきが写りこむ
「…やめるなら、今だ。どうする?」