第3章 甘い匂いをもっと近くで
翌朝、起きて顔を洗い
普段し慣れない化粧をして
髪を結い上げ
なかなか着ない流行りの着物に着替える
準備万端で部屋を出ようとすると
「みずきさん、失礼します。お迎えが来てます」
アオイが呼びに来た
『今、行きますね』
直ぐ様、玄関に向かうと
「みずきさん!おはようございま…」
炭治郎が固まる
『おはよう、炭治郎君。…変かな?』
炭治郎は首を勢いよく振りながら
「いや、あの、めちゃくちゃ似合ってます!可愛いです、とっても」
食い入るように見詰めてくる
『ありがとう、じゃあ行こうか?』
「…は、はい、行きましょう!」
炭治郎が左手を差し出し、ニコッと微笑む
その手をそっと握ると嬉しそうに手を引かれ蝶屋敷を後にした
久しぶりにゆっくり来た街にみずきは楽しそうにニコニコしている
『炭治郎君、朝餉は済ませた?』
「いえ、まだです。みずきさんは済ませましたか?」
『まだだよ、何食べよっか?』
楽しそうに店を選び、軽く食べようと洋食屋でサンドイッチを食べる
炭治郎は初めて食べたようで喜んで食べていた
会計をしようとしたら、炭治郎くんが済ませてしまい
悪いからと言ったら
男の俺に払わせて下さいと譲ってもらえなかった
また手を繋ぎながら歩くと小間物屋があり
『あ、あの紅、可愛い』
と足を止めたので
「みずきさん、寄りますか?」
そう聞くと嬉しそうに
『うん、行きたい』
言いながら、炭治郎の手を引きお店に入る
炭治郎はまた善逸の話を思い出す
(女に紅を贈るのは口付けしたいって意味で簪を贈るのは髪を乱したい、着物は脱がしたい、全部贈るのは全てほしいって求婚の意味で、櫛だけを贈るよりえろいよなー)
…善逸ぅぅ、出てくるなー!
と心の中で思っていると
『炭治郎君、どっちが似合うかな?』
莟紅梅色と撫子色で悩んでいるようで
悩む姿にグッとくると
「俺はこっちが似合うと思いますよ」
撫子色の紅をみずきからすっと取ると
「…俺が、買いますね」
色香を含むその表情にみずきは頬を染める
『た、炭治郎君、あの…』
「意味は、分かってますよ。…この後、二人になったら俺の前でつけて、くれますよね?」
耳許で囁かれ
『…ん、わ、分かったから』