第3章 甘い匂いをもっと近くで
しのぶの表情はいつになく、真剣で
「…姉のように想いながらも、どこかで私だけのものに…いえ…恋仲になりたいなんて、浅はかで笑えますか?」
自重気味に笑う
『しのぶさんがそんな風に考えてたのに、気付かなくて…追い詰めてすみませんでした…』
しのぶは目を見開く
「…気持ち悪いと、思わないのですか?」
『人を好きになる感情を、気持ち悪いなんて思いません。…むしろ、近くにいたのに気付かず……気持ちにも答えられず、すみません』
誠意ある返事に
「…だから、みずきさんを盗られたくないのに」
呟きながら、しのぶがふわりとみずきに抱き付く
「幸せにならなきゃ、許しません。もし竈門くんがみずきさんを泣かせたら…その時は私の毒で確実に殺しますね。」
黒い雰囲気を醸しながら、にこやかに話すしのぶに
『わ、分かりました、炭治郎君を死なせないようにしっかり幸せになりますっ!』
と慌てて答えた
「…みずきさんはこんな時も、人の事ばかりですね」
『…私はもう誰かが傷付くの、見たくないだけです』
少し遠い目をした後、しのぶに視線を戻し
『…だから、しのぶさんにも幸せになってほしいです』
慈愛に満ちた瞳で微笑む
「大丈夫ですよ、私はみずきさんが幸せで蝶屋敷の皆が居てくれればそれが1番です」
嘘は言ってない、ただ本当は私が幸せにしてあげたかっただけ
でも、受け入れてもらえなかったらと怖じ気付き行動出来なかっただけ
竈門くんより、時間はたくさんあったのに
『そうですか。…ありがとう、しのぶさん。』
「いえいえ、どういたしまして~。あ、これ、途中でしたね。実はこれ…」
としのぶが香油とクリームの説明をした後
「では明日、おめかししてゆっくり楽しんで下さいね~」
と軽い口調で話し部屋を出ていった、静かに涙を流しながら…
みずきは言われた通りにクリームをぬり、準備をしっかりしてからまた眠りについた
今夜の出来事は心に秘めて墓場まで…