第3章 甘い匂いをもっと近くで
『…蕎麦屋さん』
「分かりました、お腹が空いてるんですね?」
と言った後、炭治郎はふと善逸の言葉を思い出す
(最近は連れ込み宿より、蕎麦屋の二階でお楽しみになるのが流行ってるらしいぜー。たまんねーよ、声聞こえてきて、もう蕎麦屋行けないからっ)
……まさか、そんな訳
とみずきに視線を向けると
『…そういう意味で、誘ってるよ?』
爆弾を投げ付けられた
「…~みずきさん!そういうのは男の俺から言うものですよ?」
『だって、炭治郎君が考え込んじゃったから…年上の私がしっかりしなきゃって』
思ってと言おうとしたら
炭治郎の唇で塞がれてしまった
『…!ん、ん…』
少し強引に炭治郎の舌で口を開かれ、口内を舐め上げられる
『ふぁ、…ん、ぅんっ!』
しばらくそのまま口の中を味わい堪能すると
「…みずき、俺は焦ってないから。今日は帰ってゆっくり休んで、明日1日、まるごと俺にくれないか?」
ダメかな?と優しく聞かれ男の色香を放つ炭治郎に
『…そんな顔、ズルい。ますます帰りたくなくなっちゃうよ…』
「…帰らないと今、ここでしますよ?」
仕方なく、そう言って軽く脅かす
欲の色を宿した獣のような瞳に射竦められてしまう
『…~、分かった。帰るから、怒っちゃ、やだ…』
「…怒ってませんよ、心配なだけです」
繋いだ手を顔の前に持っていき、軽く手の甲に唇を落とすと
「明日の朝、迎えに来ますから。楽しみにしてます!」
優しい笑顔を向けた後、顔が近付き
「…俺を焦らして煽ったんですから、覚悟しておいて下さいね」
耳許で低く囁き、チュッと口付けると
「お休みなさい、みずきさん!」
炭治郎はそう言い残して、爽やかに帰っていった
今更ながら、自分がしでかした事に気付いた
…どうしよう!
何であんな事言っちゃったんだろう?!
気持ちを伝えて興奮して、ずっと一緒にいたいって思い過ぎちゃったのかな?
…覚悟してって言われちゃった
少し強引な炭治郎君、カッコ良かったな…
耳を押さえながら、思わず目がトロンとしてしまう
そこで視線に気付き、バッと振り替えると
爆笑するのを必死に堪えながらぷるぷるするしのぶの姿があり
みずきは顔から火が出そうになった