第3章 甘い匂いをもっと近くで
さらに力を込めて、抱き竦められてしまう
「俺が本気であなたを好きだって、分かってほしくて…少し強引でしたね、すみません」
そっと身体を離すと
「みずきさん、お仕事中にすみませんでした!頑張って下さい」
そう爽やかに言って走って病室に戻っていくので
『あ、まだ怪我に障るから走っちゃダメよ~』
と炭治郎の背中に向かって言うと
ピタッと止まり、軽く頭を下げながらゆっくり歩いて戻っていった
私を好き?…感情が分かる?…匂いで?…匂いが好き?
ダメだ、よく分からないけど真剣なのは伝わったから私も真剣に答えなきゃと考えていると
「みずきさん、聞いちゃいましたよ~。朝からお熱いですね~」
と真後ろに胡蝶しのぶが立っていた
『……しのぶさん、楽しまないで下さい』
「え~、それは難しいですね~?今までどんな素敵な殿方にもまったく靡かなかった女傑が若い新人隊士に揺さぶられるなんて良い物見せて頂きました~」
しのぶさんだけには言われたくないと、心で思いながらも言わずに耐える
『…ただ困っているだけです。外見や優しくされたからと好きになられる事が多かった中、感情が匂いで分かる。匂いが好きですって、あなたの中身が好きですって言われてるのと同じ、ですよね?』
「そうですね、素晴らしいじゃないですか~」
『そんな事言われたの初めてで、どうしたら良いか…』
「それは簡単ですよ。みずきさんがどうしたいかです。…その様子だと、脈はありそうですね」
至極、楽しそうにニコニコするしのぶに
『…どちらにしても、しのぶさんには楽しいようですね』
「はい、とっても。私はみずきさんが幸せならお相手がどなたでも構いませんから」
しのぶがみずきを探るように見据える
「…ここ数日、様子を見てましたが竈門くんの本気度合いは相当だと思いますよ~」
『…はい、毎日あれだけ言われたら流石に伝わります』
「まだ会ったばかりなのにとか、考えてますか?」
『……最初はそう、思いましたが今は本当に中身を見てもらってると伝わりましたが…』
「みずきさんが竈門くんをよく知らないから、ですか?」
『…確かに、そうかも、しれません』