第3章 甘い匂いをもっと近くで
「あ、見えてきましたよ!もう大丈夫ですからね」
炭治郎君が優しく微笑む
『ありがとう、ここで大丈夫だから』
降ろしてと言おうとすると
「ダメですよ、中まで俺が連れていきますから」
ニッコリ笑いながら言われてしまうが
『でも、怪我してる訳じゃないから大袈裟にしたくないの。お願い、ここで降ろして?』
上目遣いで困った顔をするみずきに
炭治郎は顔を赤くしながら
「わ、分かりました」
と素直に降ろす
『ありがとう、本当に助かっちゃった』
またね、と蝶屋敷に戻ろうとすると
「あ、あの!」
と手首を掴まれてしまう
触れられた部分が熱くなるのを耐えて
炭治郎に視線を向けると
「…前に俺が言った事、本気ですから」
ーーー
炭治郎君が怪我で蝶屋敷に運ばれ初めて会った時
やたら、鼻をスンスンさせながら何度も私を見る炭治郎君に内心、なんだろう?と思いながら処置していると
「俺、竈門炭治郎と申します!まだ鬼殺隊に入ったばかりの新人ですが、よろしくお願いしますっ!」
と怪我人らしからぬ、元気な挨拶をされてしまい
『私は神凪みずき。炭治郎君よりまぁまぁ先輩かな?あと一応、炭治郎君、重症だから静かにしてようね?』
とベッドに寝かす
その時に私の首筋をまたスンスンして
「俺、あなた(の匂い)が好きですっ!」
と言われてしまい、一瞬固まるが
『ふふふ、ありがとう』
軽くあしらい、その場を後にしたが
そこからの猛アピールが凄かった
ある朝、洗濯物を干してると
「みずきさーん、おはようございます!今日も可愛いですね!好きですっ!」
『ありがとう、怪我に障るから静かにしてようね~』
「静かにして、しっかり治ったら俺と逢瀬に行ってくれますか?」
『もう炭治郎君、冗談が過ぎるよー』
「…俺は冗談なんて言いません、本気で好きじゃなきゃ逢瀬になんか誘いませんよ」
いつの間にか、後ろにいてそのまま抱き締められる
「俺、鼻が良くて…人の感情とかまで分かるんですけど…みずきさんみたいな匂いは初めてで…その、慈愛に満ちた甘くて優しい匂いを出来れば一番近くでずっと、嗅いでいたいです」
首筋に顔を寄せ、また匂いを嗅がれてしまう
『た、炭治郎君、は、離してっ』
慌てて逃げようとすると