第2章 忘れっぽい彼の忘れられない人
気付いた時には既に遅く
ふわっと体が浮いた後、背中に布団の柔らかい感触
目の前にイタズラ顔の無一郎
「…ねぇ、僕の事好きなんだよね?」
いつもより、低い声で耳許で囁かれ
身体がビクリと反応する
『…はい、お慕いしています』
すると、少し幼さが残る柔らかな笑顔で
「嬉しいな、両思いってこんなに心が温かくなるんだね」
『…へっ?両思い、ですか?』
「…この状況でそれ、聞き返す?みずきってたまに空気読めないよね」
嫌味を言われ、少し落ち込むみずきだが
『…柱になるような人から好かれるなんて、思いませんよ』
「僕は逆にこの状態で好きじゃなきゃ、色々問題だと思うけど?」
『…確かに、そうですね』
「それに僕は好きでもない女(ひと)なんか、覚えてられないし。…こんな気もおきないよ?」
言いながらみずきの足の間に自分の足を割り入れる
『…無一郎は私と、その、ま、ま…』
「まぐわいたいよ。当たり前でしょ?」
さらりと言われてしまい、顔が真っ赤になる
『…では、私達は恋仲になるのですか?』
「…違うの?僕はさっきのやり取りでそうだと思ってたんだけど」
不機嫌な顔の無一郎に
『…私の気持ちは言葉にして伝えましたし、恋仲になりたいと思ってますが…まだ無一郎の気持ちをきちんと聞いては、いませんよ?』
はたとして
「…ごめん、両思いって言っただけだったね」
少し間が空き
「みずき、好きだよ。これからは僕だけを見てほしい。恋仲になって?」
『はい。私も無一郎が好きです、よろしくお願いし…っ』
言い終わらないうちに唇を無一郎のそれで塞がれた
隙間から、たどたどしく漏れでる媚声に無一郎は昂りはじめる
酸素を求め、僅かに開いた唇に無一郎の舌が無遠慮に押し入る
『…んんっ、はぁ、ん…』
涙目になりながらも懸命に受け入れるみずきに
「…ん…みずき」
欲を宿した浅葱色の瞳が見つめてきて
心拍数が跳ね上がる
『…無一郎、男前…』
思わず、口をついて出た言葉に
「…っ、そんな事言うと優しく出来なくなるよ?…余裕ないからね」
黒い笑みを浮かべ、無一郎が隊服を少し乱暴に脱がしていく
何故か手早く、あっという間に一糸纏わぬ姿にされる
『…恥ずかしいのであまり、見ないで下さい』