第2章 忘れっぽい彼の忘れられない人
しばらく黙ったまま、早足で屋敷に向かっていたが
「…ねぇ、僕の事、嫌い?」
茫洋とした表情のまま
突然、爆弾を投下する無一郎
『…嫌いな訳ありません。私なんかに目をかけてくださり感謝こそすれど、嫌いなんてありえません』
「じゃあ、何で僕の継子にならないの?」
『…私は確かに刀の色は白です。霞の呼吸の適正はあります。ですが、私は特に力がある訳でも足が速い訳でも、ましてや刀捌きが上手い訳でもありません』
無一郎が射竦めるように見る
「だから、それを決めるのはみずきじゃない。僕だよ」
『…~っ…そうです!だから、嫌なんですっ!』
突然、大声を出され
無一郎はキョトンとする
『……お、お慕いしてる方に…ガッカリされたくないんですっ!』
捲し立てるように続ける
『本当は遠くで見ているだけで幸せでした!若いのに才能があって、あっという間に柱になられて…無一郎は女性隊士からとても人気があります!』
一呼吸おく
『…私も初めて合同任務で一緒に鬼を狩った時、その凄さに圧倒されました。…とても、素敵な方だなって想って…しまいました』
無一郎は少し頬を染める
『こんな大した事ない、一女隊士のくせに不純な想いを秘めたまま継子など…本当におこがましいです。だから……ん!』
無一郎に指で唇を塞がれた
「それ以上余計な事喋ったら、今この場で犯すから」
イタズラな笑みの裏にどす黒さを感じ、口をつぐんだ
「…はぁ、せっかく気持ちに気付いて嬉しくて僕から言おうとしたのにな」
とぼそりと呟くと
「続きは屋敷に着いてから。いいよね?」
圧と身の危険を感じながら、みずきは頷いた
程無く、屋敷につき玄関へ促され広いその中に入る
居間に案内されると思っていたのに手を引かれたまま思いっきり通り過ぎて
さらに奥の無一郎の寝室へ誘われた
襖を開けると布団がひいてあり、一気に緊張感が走り
たまらず逃げ出そうとすると
「…男の家に上がった時点でもう遅いと思うんだけど?」
と強引に寝室の中に入らされる
いやいやっ!無一郎が手を引っ張って離してくれなかったんでしょ?
しかも大事な話がって言うから…
あれ?寝室で話…って…?