第12章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~後編
パサリと
床に夜着が落ちる音がやけに響いた気がした
喉も乾くようなイメージで
本当は酷く緊張している表情をただ見られたくなくて
苦し紛れに後ろを向いただけだったが
義勇様にはやたら艶めかしい姿に見えたようで
「…月明かりでの後ろ姿、なかなかに美しいな」
ため息をつくような声で呟かれた
その熱っぽい視線から逃れたくて
先程まで着ていたドレスで素早く素肌を隠す
視線だけで上気する身体
痴態を晒してる気さえしてくる
着替えるだけなのに
後ろを向いたまま、必死にドレスを着て口紅だけは何とか引くと
ツッーッと義勇様の指が背中を遊ぶ
「余興としては、少し…長いな」
『……ぁっ…』
撫で下ろす動作にたまらず媚声が漏れる
上目遣いに義勇様を見上げる
『…う、上手く出来ず…すみませ…ん』
「…その表情も実に美しいが、そろそろ時間切れだ」
何とか形だけ着れたドレスと
申し訳程度の化粧姿で
ベッドまで運ばれると
何もしなくても美丈夫な義勇様の顔が近付き
口を開くように促される
僅かに開いたそれに義勇様の舌がヌルリと入る
深い口付けを交わしながら、体を弄られ
ふわふわと浮ついたような
それでいて骨の髄まで痺れるような快楽に夢中になる
しばらくすると
義勇様の唇が離れ、名残惜しそうに銀糸が伝う
口紅が移ったそれは唾液と月明かりも相まって艶めかしい
義勇様の口紅姿に釘付けになる
「……フッ、そんなに見つめてどうした?」
口紅を指で伸ばすような仕草がたまらなく色っぽい
美丈夫って、ズルい…
目線が外せない、底知れぬ魅力に
腰が既に砕けたような感覚に陥るが
何とか言葉を紡ぐ
『…義勇様が、その、あまりに素敵で…目が離せないだけ、です』
「褒められて気分は良いが…熱っぽい視線は気を急かせるな」
言うやいなや、大礼服をやや乱雑に脱ぎ捨てる
バサッと少し重ための音の後
ギシリッとベッドの軋む音がやたら耳に響いた
「…触れたら抑えが効かなくなりそうだ」
『ぎ……義勇様の望むように…な、なさって下さい…』
それを合図に義勇様の指が首筋を伝い
鎖骨を通り、谷間をくすぐり
へそまで下ると
また谷間や鎖骨に戻るを繰り返される