第12章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~後編
まるで、確定したみたいな言い方…
と思っていたら
「…私は義勇が選んだのなら、文句はない。好きにするといい」
言葉と裏腹に苦虫を噛み潰したような表情の陛下
正反対に涼しい顔をする義勇様
それを優しく眺める第10王妃、義勇様のお母様
「……まさか、こんな重大な国益に関する案件を持ち出され、それを条件に好き勝手な事を通されるとは思わなんだ。能ある鷹は爪を隠すとは、よく言ったものよ…」
何を言われてるかは分からないが、義勇様の完全勝利だったのは何となく分かる
末恐ろしい方です、義勇様は
「私にも発言の許可を」
よく通る声に顔を向けると派手な色が目に入る
第1王子、杏寿郎様だ
「良い、もう私は引退だろう。好きにするが良い」
え、引退?!本当に何があったの?!
「ありがとうございます、陛下」
すると、杏寿郎様がこちらを見やる
「義勇の妃になるなら、もう名は呼べぬな。これからは《サファイア姫》か」
ニコニコしながら言われ
『恐れ多くも義勇様に名付けて頂きました、よろしくお願い致します』
「ふむ、君は相変わらず堅いな!義勇の護衛をしてる時とあまり変わらんな」
豪快に笑われ、戸惑っていると
「…何が言いたい、新スルタン殿」
義勇様が面倒そうに促す
え、杏寿郎様が新スルタン様?!
…私と義勇様の婚姻を認めてもらう場だったのでは?
「まあ、そう面倒そうにしてくれるな。元はと言えば、お前が大それた事を仕掛けたせいでこうなったのだぞ?」
…義勇様、一体何をなさったのですか?
「…俺は、俺の意見を通す為に準備をしていたまでの事。お前も分かっていたはずだが?」
「…それは、また別の場で話すとしよう」
杏寿郎様から僅かに圧がかかる
「さて、《サファイア姫》!君は今日から正式に義勇の妃になる。そして、私も今日から正式にスルタンになる!以後、よろしく頼む!」
「…みずきがいない間に決まった事だ。済まないが把握してくれ」
義勇様がウンザリした顔をしながら言うので
『…畏まりました』
と答えるしかなかった
早く部屋に戻りたがる義勇様と今後の話をしたいと引かない杏寿郎様のやり取りを尻目に
先に部屋に戻らせてもらった
義勇様の助けを求める目を見なかった事にした
あとが怖い…