第12章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~後編
移動中、終始重々しい空気だったが
今まで護衛として死線を潜り抜けてきた私には何らダメージはない
それが気に入らないのか侍女長は不機嫌そうだ
謁見の間に着くと
「中で王がお待ちです、先に第2王子だけお入り下さい。…あなたはここで待つように」
私に嫌味ったらしく言い残し、侍女長は頭を下げてスッといなくなった
所作と言葉遣いは完璧だが、敵意が剥き出しで残念な感じだ
…大体、あなたにそこまで恨まれる覚えはありませんが?
(後々分かる話だがどうやら侍女長の娘が適齢期だった為、王族に嫁がせたかったようで勝手なやっかみを受けたらしいが下らないので割愛)
そんな事を考えていたら
「では、先に行く。呼ばれたら中に入るといい」
『畏まりました。行ってらっしゃいませ、義勇様』
スッと顔を近付けられ、まさかと思った時には唇を奪われていた
チュッ
わざとリップ音がなるように唇を離す
『…義勇様っ!ここをどこだと…誰かに見られたらどうするんですか?』
「大切な事をする前の儀式みたいなものだ、気にするな」
優しく微笑むと
「行ってくる」
向き直り、真剣な顔になると
「義勇です。失礼致します」
私の抗議は聞かずに扉を開き、さっさと行ってしまった
一気に静けさが辺りを包む
そう言えば、義勇様の策って一体何なんだろうか…
ーーー
大分、時間が経ったが今だに呼ばれない事に少し不安になる
義勇様は大丈夫だろうか
私が相手ではやはりダメだと反対されているのだろうか
そう考えていると
「…みずき、呼ばれているぞ?」
いつの間にか、義勇様が心配そうな顔でこちらを見ていた
……呼ばれたのに気付かない程、考え込んでいたようだ
『…はい、只今参ります』
緊張しながら、扉を開け
『失礼致します』
頭を下げながら入り
『謁見を賜り、光栄に存じます』
片膝を付き、挨拶をすると
「…良い、表を上げよ」
『はい、陛下』
ようやく、頭を上げると
威厳ある顔と視線が合う
さすがはスルタン、威圧感がすごい
「そなたが義勇の妃になる者で間違いないな?」
『はい、恐れ多くも見初めて頂き妃にと仰って頂きました』
答えながら違和感に気付く
…ん?今、「なる者」って言った…?