第12章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~後編
「フッ、そうか」
満足げな表情をした後
「…そろそろ、呼び出しがかかるだろう。みずきもいつでも呼び出されても良いような格好をしておいてくれ。そこに何着かドレスと装飾品、化粧道具を用意した」
義勇様が指差した先に素敵なドレスが何着もかけてあり、見たこともない素敵な装飾品に高価な化粧道具が用意され驚いた
いつの間に…
『承知しました』
ドレスを眺めていて、ふと1着のドレスが目に入る
義勇様の瞳の色のように深い青みがあるシンプルなドレス
シンプルながらに品のある作りで一目で高級だと分かるそれを見詰める
「…それが気に入ったか?」
いつの間にか大礼服に着替えた義勇様が横にいた
『…義勇様。何故、大礼服なのですか?謁見するならカフタンでは?』
「…この服を見て、何か思う所はないか?」
改めて、見てみると
全体的に黒地に金糸の刺繍、釦も金色、襟と袖は光沢がある生地で角度によって翡翠色やエメラルドグリーンに見える生地に金糸で繊細な刺繍が施された装い
そこで一瞬、自惚れた考えにいたる
『…あの、まさかとは思いますが…この色合いは』
「気付いたか、流石だな。…みずきを思い浮かべて作らせた」
一気に顔が熱くなった
いつも長い黒髪を金糸の紐で結び上げ、瞳の色は角度によって翡翠色かエメラルドグリーンに見える私
『…今からでも、間に合います。こちらはまた今度着て頂き、今回はカフタンに致しましょう』
すると、不服そうな義勇様の顔が近付き
「婚約の報告に行くんだ、その相手を思わせる衣装を身につけるのは良い事だろう?…俺はみずきが見ていたそれを着てくれたら、嬉しいが?」
耳許で囁かれ
義勇様を思い浮かべてドレスを見ていた事がバレていたのも相まって恥ずかしくなり
『…~っ…分かりましたっ!』
振り替えると
軽く口付けをされ
「…着飾ったみずきを見れるのは楽しみだ」
言いながら、スッと寝室を後にする義勇様を見ながら
その余裕がある様に少し悔しいみずき
今から義勇様が驚く位、化けてみせます
あなた様の元侍女頭の実力、見せて差し上げます!
そこから、しっかりドレスを着こなし
用意されていた化粧道具と鏡を使い、短時間で仕上げた
うん、短い時間にしては化けたと思う