第12章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~後編
丁度、身支度が出来たタイミングで侍女達がやってきた
危なかった…
「失礼致します。おはようございます、王子」
「あぁ、おはよう」
「ご指示通り、侍女頭抜きで参りまし…」
それまで頭を下げていた侍女達がこちらを見て一瞬固まる
まあ、そうなるよね…
「お前達にまず伝えておきたい事がある」
「はい、何でございましょうか?」
少し動揺を見せるもすぐに平静を取り戻し、淡々と対応する侍女達
普段の指導の賜物である
「近々、みずきを俺の妃に迎える。今日から侍女頭兼護衛を引退してもらうつもりだ。それに伴い至急、後任の侍女頭と護衛を決めてもらいたい。お前達は皆、優秀だ。自分達で決められるな?」
「はい、畏まりました。今日中に話し合い、決まり次第報告させて頂きます」
「それから、みずきが妃になる事はまだ内密に頼む。お前達の胸に留めていろ、王から許可が降りるまでくれぐれもだ」
義勇様から圧がかかるが
「承知致しました」
淡々と頭を下げる優秀な侍女達
「お前達は今日からみずきの名を呼ぶ事を禁ずる。呼び名はもう決めてある。《サファイア姫》だ」
『サ、サファイア…姫…』
自分にはあまりに分不相応な呼び名に思わず、繰り返してしまった
「俺の瞳の色から思い付いた。《サファイア》は永遠の愛を象徴する宝石だ、正に相応しい呼び名だ」
聞いてるこちらが恥ずかしい言葉が並び、思わず赤面してしまうみずき
「今まで〈誠実〉に〈忠実〉に俺に尽くし、〈慈愛〉に満ちたその性格も加味している。……否は聞かない、良いな?」
『…仰せのままに』
頭を深く下げた
義勇様はそれを嬉しそうに見た後、侍女達に向き直り
「理解したなら、俺の支度は良いから自分達のやるべき事を片付けるといい」
「仰せのままに」
頭を下げながら、部屋をスッと出ていく侍女達
「……ちなみにだが」
『はい?』
義勇様が不意に近付くと
「サファイアは浮気をすると色が濁り変わるそうだ。…疑ってはいないが近々、みずきに似合うサファイアの耳飾りと首飾りを贈る。常に身に付けると良い」
耳打ちをした後、吐息を吹き掛けられ
身体がピクリとしてしまう
『…浮気など致しません!私は義勇様だけです!』
怒りながら言うと