第11章 高貴な方の唯一無二の支え～スルタン～前編

『それは、分かりましたが……でしたら、何故私にまで気付かれたくなかったのでしょうか？』

私は常に側にいるのだから、むしろ協力者にはうってつけだ

信頼されてなかったとは、到底思えないし…余計に分からない

「………俺に、護衛が必要でないとなればみずきと一緒にいる時間が減る」

『…はい？』

この方は一体、何を言っているのですか？と顔に書いてあったのか

「…呆れるな、これでも考えたんだ。一目惚れなどと浮わついた気持ちを隠し、ずっと側にいる方法を…」

『…ひ、一目惚れ？』

「試験を受けていた時、ずっと気配を消して見ていた。みずきはずば抜けていたし、目立っていたが…もっと運命的な【何か】を感じて、一目で惹かれた」

無口な義勇様が熱く語る姿だけでも、破壊力があるのに告白めいた説明をされ

またもパニックで思考回路が停止した

「幸いみずきは優秀だったからな、すぐに兼任を思い付いた。兼任なら忙しくて、俺の側に居ざろう得まい」

『…』

「…何故、黙る？」

『……では、私は今まで義勇様の術中にハマっていたと？』

「…予想外も、いくつかはあったが概ねは間違いないな。だが、決して誤解するな。みずきが優秀なのは事実だ。…俺がみずきを《愛している》のもまた、事実だ。俺は全ての状況を見て、最善を尽くしたに過ぎない」

至極優しい表情をして、頬を撫でてくる

一連の言動と仕草に

目を見開き、心臓が一際大きく脈をうつ


今、《愛している》って言われた…？

「……こうして、情けない話をする羽目になったのも俺の実力を一瞬で見抜く技量があるからだ」

褒めてもらってるのにイマイチ頭に入らない

《愛している》という言葉を反芻するようにその単語だけで頭がいっぱいだ

『…あ、の…もう、どうしたら良いか…分かりかねます…っ！』

「俺に愛でられる覚悟をすれば、良いだけだ」

『…名を呼んだのですっ…覚悟は…あ、あります！』

「…ほぉ、それは楽しみだ」

横抱きにされ、逃げ場とタイミングを失った

「今宵は一緒に眠る。逃げる事は、許さん。…気絶は許したのだ、もう譲る気はない」

『…そ、そんなご無理を！』

「…さっきも言ったが、誰が何と言おうと知らん。俺は俺のやりたいようにする」

策はあるのでな、と小さく呟く