第11章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~前編
だが当初こそ、納得がいかない者達から数々の嫌がらせを受けたりしていて
義勇に好かれる嫌われる以前に多忙を極めた
お陰で余計な事を考えずに仕事に没頭出来た
当然、彼女の実力は本物で誰も手も足も出ず
その間に義勇の命を狙う輩から守り、身の回りの世話まで完璧にこなした
1度、毒味役が金を握らされ裏切った時も彼女が瞬時に見抜き取り押さえ難を逃れている
義勇はそんなみずきの様子を黙って見守っていた
本当は助けてやりたかったが彼女が贔屓されているとか、実力がない等と思われるのは絶対に避けたかった為だ
試験を受けてる時からずっと、彼女だけを見ていた
その抜きん出た才能、容姿、声、仕草、所作
何もかもが気になって仕方なかった
たった1人の女性から目が離せず
自分の中の【陽の気】が彼女に恐ろしく反応した
今まで見ていた全てが色鮮やかになった気さえした
生まれて初めての感覚を経験し、最初は戸惑っていた義勇
今まで自分の容姿や肩書きにすり寄ってくる女性は数多いたが
中身を見ない、その愚かさに
どれも価値のない色褪せた(物)に見えた
お前達に俺の事など理解は出来ない、俺はお前達とは違う
そう思っていた
義勇は母が王妃だったが、家柄が王妃の中で1番低く母があまり良い思いをしてこなかった為
あくまで中身に拘り家柄や役職、肩書きに重きを置かない
王族や貴族は普通、家柄や肩書きを気にする為
周りからは少し浮いていた
そんな冷めた義勇にとって、みずきという存在はまさに青天の霹靂だった
無条件でみずきの全てが欲しい
単なる一目惚れなのか、運命なのか
彼女を見守りながら、ずっと考えあぐねていた
みずきもまた、初めて義勇を見た時から特別な存在に見えた
元より王族なのだから特別だが、そうではない
自分にとって、特別な【何か】を感じた
だが元来、真面目な性格の為
目の前のやるべき事に向き合うのに必死だった
殺伐とした日々を過ごす中
口数の少ない義勇から、ある日突然
「…お前には、いつも感謝している」
と、柔らかな笑顔で言われた時
『勿体無き、お言葉にあります』
瞬時にそう答えたが
内心、心臓が飛び出るかと思った
普段、笑わない彼の笑顔の破壊力は計り知れない