第11章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~前編
義勇はこの国では珍しく肌の色が白く、黒と青の美しい髪
覗き込めば忽ち、吸い込まれてしまうほど澄んだ濃紺の瞳
第10王太后である母の東洋の美が色濃く出た容姿
《スルタン》とは真逆で人気を二分するほど、見目麗しい
杏寿郎は肌の色は黒め、髪は燃えるような赤と黄
覗き込めぬほど、眩しくギラついた赤と黄の瞳
まさにこの国の王に相応しい容姿だ
どちらも王族なので【陽の気】はかなり多いが
杏寿郎は妃を10人も娶り毎日、気を交換し合わなければならないほどに多い
10人もいるのに、時には同じ日に何人か相手をしたりするがその妃が誰か、赤裸々に分かる辺りは杏寿郎らしい
義勇はそれが全く理解出来ないようだ
気を交換する、情を交わすのは1番好きな人だけがいいらしく、妃のみずきの負担は大きい
前に杏寿郎に
「せめてあと1人、妃を娶れ。王族の妃の負担は大きい。少しは考えてやるといい」
と言われ
「誰よりもあいつの事を想っている。…身体の負担より、想い合う気持ちが大事だと俺は思っている。心配はありがたいが…余計なお世話だ」
と、頑として聞かなかった
そして、みずきは【陰の気】が非常に濃い
彼女の一族は代々、男は護衛、女は侍女を必ず宮殿に送り出す神凪一族だ
位は低くはないが王族に嫁げるほど高くもない
当然、普通なら【陰の気】は多くないはずだが彼女は産まれた時から異様に【陰の気】が多かった
その為か、兄妹の中で1番優秀で
最初、第2王子付きの護衛兼侍女頭として採用された
女性の身でありながら、武の才能もあり気も利くので試験を受けた屈強な男達や名家の娘の中から選ばれた才女
護衛と兼任で侍女頭も任されたのは彼女が初だ
最初に義勇に会った時
『本日より、第2王子の護衛兼侍女頭として付かせて頂きます神凪みずきと申します。何なりとお申し付け下さいませ』
と挨拶するが、言葉が返ってこず頭を上げると
「…」
こちらを凝視する彼と目が合う
『あの…何か失礼がございましたでしょうか?』
すると、ハッとしたような顔をして
「何でもない。…1つでも大変な仕事だが、兼任してもらう。非常に優秀だと聞いている。…よろしく頼む」
と言うとプイっと背中を向けられ、正直あまり好かれてないのかと思っていた