第11章 高貴な方の唯一無二の支え~スルタン~前編
『…っ…あ、…あぁぁんっ』
宮殿の奥まった大きな一室から媚声が漏れ出る
ギシギシとベッドが軋む音とそれを響かせるは
この宮殿の主でこの国の王《スルタン》の王兄殿下、義勇と妃のみずきだ
『…あ、ダメです、殿下…っ…もう…イッてしまいそうです…!』
「…お前は、いつになったら慣れる?…二人の時は義勇と呼べ、みずき。…好きなだけイくといい」
『義勇…様ぁ、イっちゃう…んあぁぁんっ…!』
ほぼ、毎日漏れてくるものだから
宮殿で働いてる者は皆、慣れている為
特に気にされる事はない
寧ろ、侍女達の間では
あんな素敵な方に毎日、情熱的に愛されて同じ女性として羨ましいとか
王族なのに夫婦仲が良くて本当に素敵とか
妃を1人しか娶らないなんて純愛で素晴らしいとか
言われている
それほど、珍しい状況なのだ
普通、妃は何人も娶る
王族の血を絶やさぬ為に、増やす為に
また王族特有の【陽の気】を溜め込みすぎない為に女性が持つ【陰の気】と交わり、中和させバランスをとる為に
当然、閨への通いもそれぞれにするので1人に集中したりしない
ましてや、妃1人の為に宮殿を新たに作るなど前代未聞だ
普段、あまり発言をしない義勇の強い希望だった
王家代々の宮殿とは別の宮殿を自分の功績(新たな交易行路作りと管理)で勝ち取り
妃が余計な事に気を揉まぬようにした
その時の交易行路は今や、国の主だった収入の要になっている
それをきっかけに王位争いに発展しそうだったが
それを予想した当時の第1王子の杏寿郎と第2王子である義勇が話し合い、裏で暗躍していた者達の弱味を握り黙らせ
第1王子が《スルタン》となった
この国は代々、武に長けた者が上に立つ
義勇も文武両道ではあるが、武と【陽の気】の多さは第1王子の方が優れていた
元より王位に興味がなかったのもあり
自分の希望が通るようにした上で誰もが望む《スルタン》の座を譲った
底知れぬ実力者である