第10章 少ない口数が増える理由は?
その視線に身の危険を感じながらも
「俺は水屋敷に冨岡さんに会いに行ったら、みずきさんと会って話がしたいってなってここに来ただけです」
炭治郎が答えると義勇はピクリと反応する
「…話とは何だ?」
今度はみずきがピクリとする
『…別に他愛ない事です』
「……普段、着ない着物を着て化粧をしてめかし込んで出てきているのにか?」
語気が強い
完全に誤解しているが炭治郎は自分に少しやましい気持ちがあった為、否定する事が出来ずにいると
「…もういい、把握した」
みずきの手首を掴むと
「帰るぞ。炭治郎、用があったなら悪いがまた日を改めろ」
半ば引きずるようにして連れていかれ
『…痛いです!離して、義勇さん!』
「うるさい、離さない」
こちらを振り返る事もなく、冷たく言い捨てられて
涙が溢れた
私は義勇さんと一緒に楽しい気持ちでいたいだけなのに…
二人の深く悲しい匂いと濃い嫉妬の匂いが混ざり、炭治郎の鼻に届く
いつもなら必死に止めて説明するのに体が動かなかった
心のどこかに無視できない迷いがある
炭治郎は複雑な気持ちで二人の背中を見送った
ーーー
任務明け、鎹鴉で前情報より鬼が格段に弱く早々に倒し終わったと報告すると
虫の知らせのようなものを感じ
普段はあまり寄らない水屋敷から程近くの街に立ち寄った
最近、みずきもどんどん強くなり階級が上がりお互い任務で会えていないな…
だが、今日は非番だったはず
久々にゆっくり出来そうだ
「みずきの好きな甘味でも、買って帰るか…」
そして、鮭大根をねだってみよう
みずきの料理が食べたい
そんな事を考えながら、歩いていたら自然と顔が綻んだ
しかし、すぐにその表情が一変する
みずきのお気に入りの甘味処に
めかし込んで見紛う程に可愛いみずきと
嬉しそうに笑顔を見せる炭治郎
一瞬、我が目を疑った
あれは一体、どういう状況だ?
付き合いたての頃、年上の俺に見合う為にとみずきはよく化粧をしていたが
そのままで可愛いと思っていた俺は別にしなくて良いと言ってからとんとしなくなった
今思えば、言葉が足りなかった気もする
いつもだろうが…