第13章 13、ハリネズミのジレンマ
仕事の話や、事件の先の話をしていれば、いつの間にか私の家まで送ってくれた乱歩さん。
今までで1番話したかもしれない。
これが死ぬ前の幸せだったりするのかな、なんて考えてしまう。
ああ、さよならかなあ……。
数分後。
「、、、」
『ちょっと、いつもの威勢はどこいったの?』
送ったからなんかちょうだい。なんて言われてしまって、家に上げることになってしまった。
なになに、イベント発生しすぎじゃない!?
取り敢えず紅茶とおやつ用に作っておいたドーナッツを出した所で、
「いや、恥ずかしくて、、、!」
『そう。』
うぅ、変な間が怖い。
帰り道ではそんなこと無かったはずなのに。
生活感しかない部屋だけど大丈夫かな、
洗濯もの畳んどいて良かったな、
とか考えていると、乱歩さんの口が開いた。
『あのさ、ゆめ。』
「……はい?」
いつもは聞かない声色に思わず此方も窺ってしまう。
『どうして僕の事好いてくれるの?』
「それは、、、」
「わかんないです!だって好きなんですもん!」
考えた末に出てきた言葉はそれだけだった。
そっか。きっと振られるんだ、帰り道の幸せはこの為だったのか。
悲しくなる気持ちを隠しながら、いつもの笑顔で言う。
『はぁ、、、、。ほんと莫迦。』
莫迦かぁ。そうだよなぁ。
あぁ、泣いてしまいそう。
『僕も。』
「へ、、、、?」
どう言う意味の言葉なのか理解出来ず、聞き返してしまう。
『僕も好きだよ。』
真っ直ぐ私の目を見て言う姿。
翡翠が私を突き刺して離さない。
『でーも。』
『僕らは付き合えないかもしれない。』
あ。突き放されてしまった。
すとん、と心に落ちた言葉がグサリと刺さる。
「ど、どうして。」
好きだと言われ浮つく心と
付き合えないという重い心が
相反し合って不思議な感覚になる。
その間も乱歩さんは心を発していて。
『僕が武装探偵社の社員だから。』
『僕と付き合ってるなんて情報がもし漏れたら、君が危険かもしれない。』
「それは、、、、」
『だから、付き合えないかもしれない。』