第14章 14、酔い合い(中也落ち)
夜の仕事。
と言っても、幹部である中原さんをサポートするだけの仕事だが。
仕事が片付いたらしい中原さんが車に乗り込むと、シートベルトを付けながら呟いた。
『なァ。』
「はい、どうしました?」
『呑みてぇ気分だからよ、付き合ってくれるか?』
誘うような目で見つめる中也さん。
それを知っていながら知らないフリをする。
だってサポート係だから。
「……えぇ。大丈夫ですよ。」
・
『__そん時に俺は太宰の奴を殴ってやったんだ。』
「ふふ、そんな事が。」
自慢げに話す中原さんはワインをあおっている。
私は帰りに中也さんを送って行く為、烏龍茶を飲んでいて。
『○○は呑まないのか?』
「はい。じゃないと飲酒運転になっちゃいます。」
マフィアが飲酒運転怖いなんて笑えますね。
と笑いながら中也さんを見ると、
ばちりと目が合う。
「……中原さん?」
『ちゅうや、って呼べよ。』
名前呼びとか。
サポート係を超えると思ってやめていたのに。
「……はい。中也さん、どうしました?」
『いやァ、可愛いなって思ってよ。』
少し蕩けた目をした中也さんの手が、私の髪を梳いてくる。
頭、撫でられ、て、、る?
「……!」
『髪もさらさらで、絹みてぇで。』
その手は髪を梳き終わると、私の頬を撫でて。
「ちょ、っと、酔いすぎじゃありませんか?」
頬があつい。
手はそのままに、親指が私の下唇をなぞる。
『唇も綺麗だなって、ずっと見てたんだぜ?』
「……ちゅ、やさ……」
顔が近づく。
キスする寸前に、中也さんの顔が止まって。
ぎゅ、と閉じた目を開くと、近くに中也さんの顔がある。
中也さんの目は、さっきみたいに酔ってとろんとした目じゃなくて。
標的を見る、獰猛な目。
男の人の、目。
『……避けないのか?』
「……はい。」
『……そうか。』
まるで分かったかのように目を閉じると、
ちゅ、と軽いリップ音をたてて唇が触れ合う。
そして離れて、ゆっくりと目を開く。
『……飲酒運転ならねぇと良いな?』
とイタズラに微笑みながら中也さんが言う。
わたしも酔っているのかな。
「私は中也さんに酔っていますよ。」
なんて言ってしまった。