第13章 13、ハリネズミのジレンマ
乱歩さんはどこか隠している。
私に分からないように。
でも、乱歩さんだけを見てきた私には、
隠しているのなんかバレバレで。
思い付いた解決策は、どこか毛恥ずかしい言葉でしか表現出来なかった。
「……秘密にしたらいいじゃないですか。」
突き放した筈の翡翠がまたこちらを見る。
『……秘密?』
私の心の言葉はもう止まらなかった。
「私たち以外、探偵社の皆さんにも、誰にも秘密で!……愛し合えば、いいじゃないですか……。」
顔が熱い。
きっと真っ赤なんだろうな。
私の想いは部屋に響いて、静かな空間になる。
『……あー…』
『莫迦。ほんと莫迦。』
謎に上を向いた乱歩さんがそう呟く。
表情は見えないけれど、首と耳が赤くなっていた。
照れてるのかなんて思ってしまう私は
言われた通り莫迦だと思う。
「……ごめんなさい。」
思わず俯くと、影が広がった。
『僕、自分でもなにするかわかんないんだよ。』
耳元にかかった熱い空気に驚いて顔を上げると、乱歩さんと唇が合わさる。
そして、離れて。目が合う。
翡翠色の瞳が私をまた突き刺そうとしている。
「え。」
理解に追い付かない頭のせいで、口から空気が漏れる私。
そんな私に乱歩さんは、私と同じ真っ赤な顔で追い討ちをかける。
『嫌って言っても、もう逃がさないから。』