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【文スト】愛故に【江戸川乱歩】

第11章 11、お土産(中也落ち)





「わー!!綺麗だ、、、、」

「ひさしぶりの海、、、、気持ちいい、、、」


バスを降り、案内板通りに進んで砂浜へ向かう。


耳に響く海の音と、視界に広がる青が、とても心地よかった。

『よーし!!悪い思い出消し去ろう!!!』

さっき先生から受け取った25点のテスト。
それをカバンから取り出し、グチャグチャに丸める。

「、、、せーのっ!!!!」

丸まった紙屑を思い切り振りかぶって海へ投げる。
それは歪な線を描き、青い海へ、、、



ではなく、おしゃれな帽子を被った人の頭にぶつかった。

『、、アァ??』

その人の足元に転がった紙屑はその人に拾われてしまった。

慌ててその人に駆け寄る。
あれ、思ったより小さい、、?私と同じくらい?


「ごめんなさい!!投げたらぶつけちゃって、」


『あー、これアンタのか。』


ほい、と手渡される。見られたかなぁと思いつつカバンの中に仕舞い

「ありがとうございます。もしかしてここら辺の高校生、ですか?」


『はぁ!?俺は22だっ!!』


物凄い顔で怒鳴られ思わず後ずさる。
そうするとその人は申し訳なさそうに首を掻き、


『ぁー、悪かったな。俺は中原中也。アンタは?』


「わ、私はゆめです。」


気まずい空間が流れる。
と、その時クラスメイトに言われた言葉を思い出す。


「お土産!!」


『は?』


中也さんを置いてけぼりにして、売店やってたかなと独り言を言いながら財布の中身を確認する。


210円。


帰りのバス代分しかない、、。
思わずがっくりと肩を下ろすと、


『ゆめ、土産探してんのか?』


「はい、、、でもお金無くて、、、」


『そうか、、、じゃあ、シーグラスでも探せば良いんじゃねぇの?』


「シーグラス、、?」


『し、しらねぇの、、、?』


着いてきな、と言った中也さんの後ろを歩く。
ふと立ち止まった中也さんを追い越しそうになりつつ、中也さんの手元を見てみると、薄い緑色の石のようなものを手にしていた。


『シーグラスってのは、ガラス片とかが海でもみくちゃにされて出来た奴だ。』


『ゆめのテストみてぇにな。』


ニヒ、と笑う中也さん。
やっぱり見てたんだ!と思わず追い掛ける。
でもその手は中也さんには届かなかった。
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