第10章 歌小説 片思い miwa
……寝れなかった。
アラームをかけることなく寝たり起きたりを繰り返していたエキドナは、とうとう上ってきた朝日に絶望した。
早起きなオビワンはアナキンを連れて大体昼前にやってくるだろう。
タブレットで様々な通知を確認すると、掃除ドローンを起動して窓を開ける。そしてシャワーを浴びてケアクリームを塗って。軽い化粧をして。
彼らがいつ来てもいいように珈琲の準備をしたところで、思惑通り彼らはやってきた。
「おはようございますマスターエキドナ。」
「おはようアナキン、オビワン。」
「おはようエキドナ。」
「丁度2人がいつでも来れるように珈琲淹れたところだったよ。さあどうぞ。」
2人を部屋に入れると、彼らのローブを受け取って軽く畳む。
丁度良く出来上がった珈琲を注いで2人に渡せば、ホログラムを起動するなり朝の珈琲の美味さに感嘆の声を漏らした。
…それから1時間後。
エキドナはまたもや夢の中だった。
夢に映る景色は、幻想的なタトゥーインの街並みと光。
隣にはまだパダワンのオビワン。心地の良い暖かい風と眺めに懐かしさを覚える。
彼とあの日過ごしてから色鮮やかになった毎日の一つ一つ。
忘れることなんてなかった。
彼の安心する声にあれだけ眠れなかったエキドナは寝息を立てる。そんな彼女を見て、オビワンは微笑ましく口角を上げた。
「アナキン、場所を変えよう。これをもっていってくれ。」
「起こさないんですか?」
「エキドナは忙しいからな。」
「僕が寝たら怒るのに!」
そう抗議するアナキンにタブレットを持たせると運んでおけと部屋から追い出す。
そして追い出した部屋に残ったオビワンは自分の軽く畳まれたローブを広げてエキドナにかけた。
それから更に幸せそうな顔をしたエキドナを残して、オビワンも部屋を出て行った。
…はっとして起きたときには窓からオレンジの光が差し込んでおり、部屋は静まり返っていてエキドナは危機感を覚える。
しかしすぐに気づく違和感にエキドナはどうしようもなく顔をほころばせた。
こうやってまた期待してしまう。今だけうぬぼれよう。
彼の香りが強くするローブを抱きしめると、幸せと喜びをかみしめた。
こんなので想いが留まるわけがない。
ずるい人だ。ひどい人だ。
とても愛おしい人だ。