第2章 ポッキーの日
〈ローグの場合〉
つい昨日大きめの依頼が終わったばかりの私たちは今日は久しぶりの1日休みの日だった。
私立ってのお願いの効果もあって、何時もは少しでもギルドに顔を出すローグも今日は一日私と居てくれるそうだ。ちなみに、フロッシュはスティングとレクターと遊びに行ってしまった。
「あ、買い物行かないと。」
「…俺も行こう。」
「え、いいの?」
「一人で行かせるわけにはいかない。」
「ふふ、ありがと。」
ローグはいつまで経っても穏やかで優しい。私を一人で出かけさせることなどないのが分かっていても、彼のこの一言を聞きたくてわざわざ確認を取っているのだ。
平日の昼間とあって商店街はあまり込み合っていなかった。軽めの日用品から買い物を始め、野菜や肉類などを買った。
そろそろ必要なものはそろったので帰ろうかとしていたところに、いつも行きつけの菓子屋さんが目に留まる。
~11月11日はポッキーの日!!~
大きく掲げられた看板の横のワゴンには見たことのないチョコレート菓子が陳列してあった。ふと興味を惹かれてそこに歩み寄る。どうした、と言いながらローグも私の後ろから商品を覗き込む。
「ポッキーだって。」
「見たことないものだな。」
「買ってみてもいい?」
「ああ。」
「ローグは要らないの?」
「ノエルが選んできてくれ。」
「うん!ちょっと待っててね。」
買い物を終えて家に帰りついた私たちは何をするでもなく、ソファーに落ち着いた。私の手には先ほど買ったお菓子の箱が2つ。
「ローグはこっちね。ビターチョコなんだって。」
「ノエルのはホワイトチョコか。」
「うん!食べよー!」
「ノエル。」
「うん?」
お菓子を食べ始めて何処からともなく訪れた沈黙を破ったのは、珍しくもローグだった。
「ほら。」
そう言って彼の手にあったポッキーを差し出してくる。くれるのなら、とかぶりついた私を見て彼は目を細めて笑った。彼がくれたのならと私の手にある白いポッキーを代わりに差し出すと彼は首を横に振った。
「こちらを貰おう。」
鼻同士が触れ合うんじゃないかと思う距離にある端正な顔。僅かに端っこが残っていたポッキーと、私の唇は彼に侵食された。
私の唇を少し啄んで離れた彼は、絶句した私を見てまた目を細めて笑った。