第2章 【同業者】
その時、事務所に居る源三への指示を出す香の肩を突然何者かが掴んだ。
「あの…お水を…。水を買って頂けませんか…?水を買いたかったんですが酔っていて財布を落としてしまいまして…探そうとしたんですがその…うっぷ、」
そこには今にもその場で嘔吐してしまいそうな男性が顔を青くしながら助けを求めていた。
その様子を見た香は頭を抱えた。
『あ"あああっ、もうこんな時に…!水買ってきますからそこのベンチで休んでて下さい!それと紛失した財布は探偵依頼として後で承りますから!』
香は男性を投げるようにベンチに座らせ急いで買った天然水を荒々しく男性の膝上に投げ込んだ。
もちろん金田一探偵事務所の名が書かれた名刺もスマートに添えて。
素早い手つきでスマホの画面を見ると鵜沢を位置を示す赤い点はチャンピオン街の方へと向かっていた。
香との距離は結構離れてしまっている。
「あの、香さん大丈夫ですか⁈鵜沢と結構距離離れてますけどっ」
『ちょっとハプニングが…。今急いで向かってる!源三くんもドローン向かわせられる⁈』
「こちらは大丈夫です!今ピンク通り抜けましたよ!俺、香さんに言われるよりも前に飛ばしてましたからねっ」
『さっすが雑用インテリ派助手。その称号も伊達じゃないね。』
「褒められてる気はしませんが…。とりあえず、香さんは急いでターゲットの元へ向かってください。俺もよく撮れる位置にドローンをスタンバイさせます!…ん?」
香が走りながら答えると千葉は疑問の声を上げた。
そんな彼を不思議に思った香は怪訝そうな顔をした。
『何?どうかした…?』
「い、いえ…。鵜沢と待ち合い人らしき人物がいるのですが、相手は一度調べた事のある顔ですね。…確か神室町で競馬のノミ屋をやっているんだとか…。ばっちり証拠は取り押さえました。しかし…もう1人の人物が気になりますね…、この2人とは関係のなさそうな男性が1人います。革ジャンにジーパンを履いた男です。」