第3章 【闇に潜むモグラ】
その後かなりの人数に聞き込みをしたが全く有益な情報は得られなかった。
この依頼は泣き寝入りするしかないのかと考えていたその時─────、
「そこのアンタ!」
『……?』
1人の男性が声をかけてきた。
「アンタ…財布探してるんだろ?俺さ、昨日見たんだよ…。ヤクザみたいな男が落ちてた財布拾ってポケットにしまったの…」
『それ…本当ですか…?もしかしてこんな見た目の…』
香は財布を見たかもしれないという男性に田辺の無くした財布の画像を見せた。
「そうそう、それ!でもヤクザっぽかったから声かけられなかったんだよね。」
『それは仕方ないですよ。それより、そのヤクザっぽい男性はどんな容姿でしたか?』
「確か…ピアスを沢山つけててグレーのスカジャンに黒のズボン。髪は刈り上げのオールバックで茶髪だったと思う。そして特に目立ったのが刈り上げのとこに"金"って文字があったことだな。」
『"金"ですか…。』
香は腕を組んで考え込むと突然その男性が指を差した。
「ちょうどあんな感じの…ってあの時のヤクザっぽい人ですよ!」
『あの人が…?』
指差す先には先程聞いた特徴。
グレーのスカジャン、黒のズボン、沢山のピアス、茶髪に刈り上げのオールバック、そしてそこには"金"の文字が。
『危険かもしれないので貴方は帰って頂いて大丈夫です。ご協力ありがとうございました。』
「えっ?俺より君の方が危ないと思うんだけど…」
『大丈夫です。ご心配ありがとうございます。』
香はお礼を言うとヤクザらしき男へと近づいて行った。
『あの、すみません。』
「ん…?君可愛いね。俺と遊びたいの?」
『少しお話ししたいことが…。ついてきて頂けますか?』
「もちろん!良いよ。」
香はその男を路地裏へと連れていくとクルリと振り返った。
「…それで俺に話って?一体どんな話がしたいのかな?」
そうニヤけながら話す男の目は欲に染まっている。
この後に起こる出来事に期待しているようだ。