第2章 【同業者】
【神室町 ピンク通り】
煌めくネオン
むせ返るような人の波
ここは欲望渦巻く夜の街、神室町。
そこにはスマホで電話をしながら足早に歩く女の姿。
『きゃあっ!』
「っ…⁈」
その女の前方不注意により目の前に立ち止まっていた男とぶつかった。
よろけた男は顔をしかめてその女を迷惑そうに見下ろす。
『す、すみません…』
「気をつけろ。」
男は一言そう言うと頭を下げる女から目線を外した。
申し訳なさそうに女は謝ると颯爽とその場から歩き去った。
───────、その口元に笑みを浮かべて。
その女とは、今神室町で名探偵と名を轟かせる(自称)金田一探偵事務所の女探偵…金田一香である。
「本当に1人で大丈夫なんですかぁ?」
もう何回目のやり取りだと言いたげにため息を吐く女、香は面倒くさそうに答える。
『はぁ…。だから大丈夫だって!ほんと源三くんは心配性だよね。そういうこと家のばあちゃんにそっくり。』
「そりゃあ心配もしますよ。女性1人の尾行調査…問い詰められた鵜沢が抵抗したり何か武器でも持っていたりしたら怪我するかもしれないんですよ?」
通話の相手は千葉源三…彼女の探偵助手である。
かく言う彼女は現在尾行調査中であった。
今回のターゲットは鵜沢(ウザワ)という男。
依頼主によると1ヶ月も前に貸したお金が約束の日になっても何かしらの理由をつけて返ってこない状況がしばらく続いているという事らしい。
しかもこの男……、同業者(探偵)であるという情報だ。
同じ探偵であるならば尾行する人の気配に敏感であるとの心配もあったがその心配も杞憂に終わった。
『万が一そうなったとしても源三くんよりは上手く対応出来る自信あるし小型GPSもバレずに仕掛けられたんだから大丈夫だよ。』
「ははは…。まぁ俺は雑用インテリ派助手ですからね、ははは。」
香は乾いた笑いで自虐する千葉を無視してスマホの画面に映るGPSの信号を確認する。
鵜沢の位置を表す赤い点は徐々に東側へと進んでいるようだった。
『これからある程度の向かい先を絞って先回りするよ。源三もドローン飛ばし…て?』