第2章 【同業者】
「…お前らも"探偵"って言ってたな?名前は?」
この状況に場違いな事を聞く鵜沢に革ジャンの男は呆れながら答えた。
「今さら名刺交換でもないだろ。八神だ…神室町の八神探偵事務所。」
革ジャンの男…こと八神は鵜沢に名刺を差し出すと鵜沢はそれを奪い取るように受け取った。
『へぇ…?八神探偵事務所の八神さん。全く聞き覚えはありませんが…。』
「うーん、2人して知らないって事かぁ。俺らもまだまだだね。」
八神は少し悲しそうな顔をしながらも納得していた。
『まぁ一応、私も軽くご紹介を。』
慣れた手つきで鵜沢に名刺を差し出すとそれを受け取った鵜沢は難しい顔をした。
『神室町で1番信頼性のある金田一探偵事務所の金田一です。ご縁はないでしょうけど困りごとがあれば何でもどうぞ。』
「金田一に探偵…。何だかデジャヴを感じるワードだな。」
『…それよく言われますがただの偶然の一致ですね。関係性はありません。』
2人の会話を耳にもせずじっと香の名刺を見ていた鵜沢は何かを思い出した。
「金田一探偵事務所…。まさか、神室町探偵のセカンドオピニオンって言われてる探偵じゃねぇか…?俺んとこに来た依頼主も何人か結果に納得がいかなくて流れてった事があった…」
『神室町でどう呼ばれてるのかは知りませんが…。そうですね、実際ウチは他探偵事務所で最初に依頼した結果が納得出来なくて2回目の依頼を受けることも少なくはないです。…まぁ、貴方にも一応渡しておきます。』
そう言って隣に立っていた八神にもついで感覚で名刺を渡すと八神はじっくりとそれに目を通した。
「"香ちゃん"ね。金田一ってやっぱりこう書くのか。」
『名前で呼ばないでもらっていいですか?』
「えっ、駄目?」
『駄目です。』
「駄目かぁ。」
きっぱり断る香に八神は残念そうにしながら鵜沢の方へ向き直す。
そして手を出した。
「まぁ…それはそれとしてほら、金渡してくれ。手間賃込みで15万…お互い紳士的にいこう。」