第2章 【同業者】
「フザけんな…こんな取り立てあるかぁ!訴えてやる!」
自業自得なのに激怒する鵜沢に何故か香も同調した。
『そうですよ。鵜沢からお金を受け取るのは私です。ここまでご協力ご苦労様でした。』
「だからそれは俺たちも困るんだって…さっきも言「おい!」」
八神の言葉を遮り突如聞こえた太い大きな声とドスドスという足音。
それは八神と同じ探偵事務所の1人らしき男だった。
角刈りに整えられた髭、濃い顔にテカテカの柄シャツ。
まさにTHEヤクザと思わせるような風貌だ。
「ぐわぁっ!」
その男は正面から鵜沢の顔面を蹴り付け、倒れたその体に乗り暴力と圧力で脅しをかける。
「訴えるだぁ⁈てめぇ偉そうに言えた口か?あぁ⁈」
「ちょっと、海藤さん?」
『貴方いきなり何してるんですか!』
海藤と呼ばれた男は鵜沢が口答えする度に何度も平手打ちをする。
さすがにやり過ぎだと言えるであろうそのやり方は本当にヤクザの取り立てのよう。
「何が探偵だ!ヤクザじゃねぇか!!」
「うるせぇ、借りた金返すのにグダグダ言いやがって!」
「もう諦めな…その人怒らすとマジで怖いよ?」
海藤に再度追い討ちされ顔が血まみれになっていく。
そんな鵜沢の姿を見かねて殴られずにすむ手っ取り早い解決策を提案すると痛みに耐えられなくなったのか鵜沢は降参した。
「分かった…、分かった!」
出番の終わった海藤が後ろに下がり、八神が鵜沢の足元へしゃがむ。
そして鵜沢は後ろのポケットから札束を出すと渋々といった顔でそれを差し出す。
その札束を八神が受け取ろうと掴むが鵜沢はまだ諦めが悪いのかその札束を離そうとしなかった。
「いいのか?この金取ってくならマジで訴えるぞ…。見ろよ…鼻の骨が折れてる、」
『待って下さい。それを受け取るのは私ですよ!』
札束を手離さない鵜沢、それを取ろうとする八神と香という謎の図が出来上がっていた。
しかし、それを八神は2人の手から奪い取る。
「…鼻血が出てるだけだよ。だいたい先に手ぇ出したのそっちだろ。」
『あっ!ちょっと、』
「いーや、お前が先に殴った!」