第25章 独占欲
「はぁ〜、なるほどな、納得。そりゃお前に言われたらさすがの千冬もやるだろうな」
「なんてったって様だからな」
「なんだよそれ」
「なんだよって、そりゃ三年連続日本一、そして現在アジア一位のスーパーピアニストで千冬の飼い主様よ」
「うわ、改めて聞くとやっぱお前すげぇんだな…なんつうか、もう手の届かない凄さで現実味ねえや」
「…たまたま上手くいっただけだ。それに、俺一人の力じゃない。周りの人達が支えてくれたからこそなんだよ」
「………お前、千冬とはまた違った意味でかっけぇわ」
「うんうん、あいつが惚れ込むのも納得だな」
「……あっそ」
「お、照れてる〜」
「そういう可愛いとこもあんのもいいよなぁ」
「うるせえ!理科室行ってくる!」
乱雑に弁当箱をしまい、冷やかすような声を流して理科室に向かった。
「でさぁ、チュール引き出しから出した瞬間すげー勢いで来んの、マジ笑っちゃってさ」
「あはは、わかる。うちの猫もそんな感じ」
理科室の扉に手をかけようとした時、中から塚本先生と千冬の楽しそうな声が聞こえて驚く。この短時間で二人に何があったというのか。
スライドドアに手をかけ、中に入る。
「お、来たか!」
「悪いね、くん」
「いえ…その、整理は」
「ああ、松野のおかげで早めに終わったよ」
「つかもっちゃんさ、話してみるとスゲーおもしれえんだぜ。猫も飼ってるらしいし」
「へえ。俺んちだってペットいるけど」
何張り合ってんだ俺。祭りの時もこんな事があったな。
「お前のとこ犬じゃん」
「へえ、のところは何を飼ってるんだい?」
「ドーベルマンです」
「それはすごいな、世話が大変じゃないか?」
「いえ……」
「いやいや、猫も大変だぜ?オレの部屋の壁マジでやべーんだよなぁ」
「うちもソファを何度買い替えたか。でも可愛いから許せてしまうよ」
「ははっ、それマジでわかる。てかさ、つかもっちゃんのとこの猫みせてよ」
「ああ、いいよ」
ほら、と言って画面をみせる塚本先生。
身を乗り出して覗き込む千冬。
なんだ、これ。
どうしようもなく、心を掻きむしりたくなるこの感情は。
なあ、
そんな近づくなよ、千冬