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【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第24章 伝える②









……
………


「…………え?」


聞き間違えだろうか?だとしたら都合のいい自分の頭に感謝したい。
タケミっちに散々バカバカ言われてきた自分の脳みそよ、今だけは本当にありがとう。


「それに、今告られたのも…………嫌じゃないって言ったけど、ぶっちゃけ嬉しかった」
「…………」
「………」
「…………」
「お、おい、千冬……?」
「……」
「おい!聞いてんのか!千冬!!」

川の向こう側に死んだはずのじいちゃんが手を振っていて、こちらも振り返したところで頬を思い切り引っ張られ意識を取り戻す。


「いだだだ……わりい、ちょっと死んだじいちゃんに気をとられてた…」
「はぁ?何言ってんだお前……てかちゃんと聞いてたか?」
「聞いてた聞いてた。オレに告られたの嬉しかったんだろ」
「なんかうぜーなお前。振ったんだぜ一応」
「おう、でも……いいよ。諦めねーし、脈アリってことだろ?」

自然に笑みがこぼれる。
ただただ、今が幸せだ。

「はっ!?バッ、バカ、そんなんじゃ!!!!」

その時、ヒューと笛のような一際高い音がなり、暗闇を閃光が照らした。
すぐさまドンっと鈍い夏の音が響く。



「……ぁ」



この日最後の花火だ。
毎年、最後の一発は一際大きく打ち上がり、空いっぱいに咲くのだ。



「な、なんだ今の!?」
「すげーだろ?最後の1発が一番デケェんだぜ」
「すげぇ…すごすぎる……!」

語彙力を失い素直に感動する彼の姿は、夏の夜の風景を切り取ったみたいだ。この光景はこれから一生忘れることはないだろう。

「、口あけて」
「は?……んむっ」

口にたこ焼きを放り込む。さっきのゴタゴタのせいで覚めて食べやすい温度になっていた。

「…んま!たこ焼きうま!」
「ぶっ、ははは!そっかそっか、そりゃよかった」
「お前も食えよ、マジでうまいから」
「じゃあ食わせて」
「は?」
「ほら」
「ッ……!し、仕方ねーな…ほ、ほらよ」

綺麗な持ち方でたこ焼きをつかみ、おずおずと差し出す。
ぱくりと口に含めば、ベタだが、何倍もおいしく感じられた。

「ん、うめぇな」
「…そうだな」
「ほら、買いまくったのまだまだあるぜ」
「しょっぱいのはもういいや、俺はあと甘いの食うからお前が食え」
「ったく、しかたねーな」




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