第24章 伝える②
「オレは、お前と友達じゃなくて恋人になりたい」
言った。
緊張で指先が痺れる。
同性からの好意、もしかしたら拒絶されるかもしれない。それも覚悟の上だ。全部覚悟の上で、伝えた。
真っ直ぐ見すえると、覆っていた手を離し顔を上げたが、ゴクリと喉を鳴らして唾液を飲み込んだのがわかった。
「……じ、じゃあ……保健室で言ってたのは……」
『大当たり。お前の言う通り、好きな人のことで悩んでんだよ』
『……あー、マジでごめん。まさか真に受けると思わなくて』
「ああ、教室で好きな人いるって言ったのもお前のことだし、保健室で言ってたのはお前が泣くから焦って…正直、自分が拒絶されんのが怖いのもあった」
「そう、だったのか……」
「オレはお前と付き合いたい。これからは今まで以上に大切にするし、お前のためならなんだってしてやる。…けど、無理ならそれでもいい。友達としてこれからも仲良くしようぜ。正直、男に告られんのなんかキモイだろうし」
「キモくねえよ!」
自虐気味に言えばかなり食い気味に返事をされ思わず驚く。きっと、気を使わせている。少し申し訳なく思った。
「…はは、やっぱお前いいやつだな」
「ちがう、そうじゃなくて」
「でも、いいから。申し訳ないとか思わなくて」
「だから、違うって!聞けよもう!」
オレの浴衣の胸元をぎゅっと掴み、見上げてくる。バクンと心臓が跳ね上がり言葉に詰まった。
「……あのさ、正直俺、恋とかそういうの、まだ、よくわかんねぇ。だから今は付き合えない。ごめん」
「おう」
「でも…お前の気持ち、嫌じゃなかった。俺も最近なんか変だし…」
「変?」
変とは、一体なんの事だろう。
そばにいたのに変化に気付かなかった。
「笑うなよ」
「笑わねえよ」
「絶対だからな」
「おう、わかってるって」
はぁ、と息をつき、ゆっくりと言葉を繋いだ。
「…体育の時とか、お前がカッコよくて急に恥ずかしくなったり、お前が告られたって知ってすげぇ凹んだり、好きな人いるって聞いて勝手に傷ついたり……とにかく、なんでかわかんねぇけど色々嫌だったんだ」