第22章 伝える①
生まれて初めての祭。
もしかしたらオレが思っていたよりずっと、今日という日を楽しみにしていてくれていたのかもしれない。体調が悪いにもかかわらずあんなにはしゃいでいたくらいだ、余程嬉しくて、刺激的で、どうしようもなく楽しかったんだ。
そんな彼は、隣で今もまだ俯いたままだ。
やはりさっきは言い過ぎたな、と申し訳なく思っていると、石階段の下を通り過ぎた女子たちのキャハハという楽しそうな笑い声が響いた。
そう、あんな風に、あの子たちのように楽しんでもらいたかったんだ。
何してんだオレは。
「………」
声をかけた時、
ドンッ!
かき消すように鈍い音が響き渡り、追いかけるようにヒューとか細い笛のような音が鳴る。
瞬く間に閃光の花が開いて夜空を照らした。
花火だ。
「!みろよ、花火………」
顔を上げ、鮮やかな光な照らされた彼の頬は涙で濡れていた。
「あ……花火……?すげ……」
「ッ、大丈夫かお前!」
「へ?なにが?」
「なにがじゃねえって!何泣いてんだよ!」
「え?あ!な、泣いてなんか……!」
花火に気を取られて忘れていたのか。今まで自分が泣いていた事を思い出したように、濡れた頬を乱雑に浴衣の袖で拭った。