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【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第21章 大渦の中心で溺れて死ぬ






時刻は夕方4時。
夏のこの時間はまだ空は青く、これから少しずつ茜色に焼かれていく。

見慣れた道はいつもの何倍もの人達が同じ方向に歩いていて、浴衣姿の人も多い。こういう光景をみると、今年も夏祭りがやってきたと感じて気分も上がる。

待ち合わせ場所は定番の石鳥居の下、ではなく、そこから少し離れた場所にある公民館裏の駐車場だ。ここは普段から人が少なく、今日も例外ではない。

待ち合わせ場所に先に到着したのはどうやらオレらしい。携帯を開き、先についたことをメールで知らせると直ぐに返信が来た。

『もうすぐ、つく』

ドクン、と一際大きく心臓が鳴る。
浴衣、着てきてくれただろうか。オレを見たら、なんて言ってくれるのだろうか。会ったらなんて言おう。




告白、どのタイミングでしよう。




そう、漢、松野千冬。
自分の気持ちにケジメをつけるために、今日こそはに告白するつもりだ。嘘偽りなく、鈍感なあいつでもちゃんと伝わるよう。気持ちを伝えるのだ。
大丈夫。事前に掻き集めた情報によると、告白成功のコツははっきりと伝える事、相手の目を見る事、あとは…アレ、あとなんだっけ。

「思い出せねえ、あと1つ……」
「ち、千冬…」
「え」

声がした方向に視線を向ける。

オレが選んだベージュカラーの浴衣を身にまとい現れたは予想通り、いや、それ以上に愛らしく、あまりの衝撃に言葉を失った。
その要因は、前髪を捻ってピンを縦に差し込む、所謂ポンパドールの髪型のおかげだろう。
美しい顔立ちがより際立っており、丸みを帯びた額を含め骨格の美しさまで惜しみなく晒されている。

つまりデコ出し最強に可愛すぎる。


「ぁ、こ、これはその…マ…お母さんが、やってくれて………」

恥ずかしそうに、隠すようにして前髪部分に手を当てながら、真っ赤な耳で俯く。

「……千冬?へ、変か?」

言葉を失ったままその姿を食い入るように見つめていると、不安そうに声を上げた。

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