第20章 お揃いで
「うーん……色々あってよくわかんねぇ」
某デパートのファッションコーナー。
この時期浴衣が豊富に取り揃えられている。
「オレはこれ」
「あ、いいな。お前に似合いそう」
手に取ったのは無地のネイビーの浴衣に献上柄のライトグレーの帯。シンプルだがシックすぎないデザインが気に入った。
「お前はどれにすんの?」
「……どれがいいかわかんねえんだよ」
「じゃあさ、オレが選んでいい?」
「ああ、いいぜ」
心の中でガッツポーズを決める。好きな人が着る浴衣を選べるなんてオレはなんて幸せ者なんだ。
「……これだな」
柔らかいベージュカラーの着物で、帯にはオレが選んだものと同じ献上柄が入ったもの。
所謂お揃いというやつだ。
「…同じ柄」
「そ、オレと色違い」
照れくさそうに笑う表情を見るに、嫌ではなく、むしろ嬉しそうだ。
「じゃあ、それにする」
そう答えて、目尻を下げて微笑んだ。
この美しい彼が、どうか誰かに奪われないよう、この先誰にも触れられないようそっと閉じ込めてしまいたい。その瞳に映るのがこの先自分だけだったらいいのにと、無理なことを考えてしまうほどに、自分はこの男が好きだと思った。