第20章 お揃いで
金曜日の授業が終わった。今週も授業をやり切った達成感で無駄にテンションが上がる。
そういえば、来週は近くで夏祭りがある。
を誘いたいところだが、彼はうるさい場所が駄目だ。どうしようか悩むところだが、声をかけてみてダメだったらやめておけばいい。タケミっちやクラスメイトにも誘われているし、そいつらと行ってもいい。りんご飴あたり買って、に持っていくだけでもきっといい思い出になるはずだ。
「千冬…お願いがあるんだ」
「ん?」
鞄を肩にかけて、の席に向かえばなにやら神妙な面持ちでオレを見てきた。
「…………その、夏祭り、俺と一緒に行ってくれねえかな…」
初めてのからの誘いだった。
誰かをこうして遊びに誘うのは、彼にとっては小学校ぶり…もしかしたら初めてなのかもしれない。緊張で口ごもりながらも、頑張って誘おうとした健気さと一生懸命さがなんとも愛おしいすぎる。どのタイミングで誘おうとか、なんて言おうとか、彼なりにすごく考えたのだろう。ああ、なんて可愛いんだ。こいつと出会って何度キュン死にしただろう。
もう、心臓がいくつあっても足りない。
「ッ……!!」
「わっ、なんだよ急に!暑い!ひっつくな!」
抱きしめると、の匂いがした。いつもの甘く安らぐ香りだ。
教室の四方からキャーだの尊いだの、女子の色めきだった悲鳴が聞こえたが無視だ。
「ったく…そういうのは一緒に行こうぜってもっと気楽に誘えばいいんだよ」
「う、うるせーな…」
照れてる。もう絶対離してやらねえと思ったが、暑いから離れろと怒られたのでしぶしぶ解放した。
「なあ、浴衣着てこいよ」
「ゆ、浴衣?俺そんなの着たことないけど…」
「じゃあ初浴衣だな!明日休みだし買いに行こうぜ」
「お、おう!」
嫌がるかと思いきや結構興味があるらしい。目をキラキラと輝かせる彼の可愛さに心臓発作を起こしかけた。