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【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第19章 夏の嘘







「何してんだお前、ほんとに大丈夫かよ」
「悪い……」

保健室特有の独特な香りが鼻を通過する。
ベッドの側の椅子に座るの顔は、随分と困惑していた。

「先生は熱中症でもなんでもないっていってるし…なんか悩みでもあんのかよ」

保健医は今不在。
オレの様子を観た直後、教員に呼ばれ保健室を後にした。念の為寝ておけとの事だったので、お言葉に甘えてオレはベッドにいる。と言っても、髪が濡れているため完全に横になっているわけではなく、ただベッドで腰掛けているたけだ。

「あると言えばある」
「教えろ」
「お前が好きすぎてどうしていいかわかんねえ」
「は?ふざけてねーでちゃんと言えアホ」

ペシッと額を叩かれる。

「ふざけてねえよ」
「ったく、冗談言う元気はあってよかった」

そう言って、ふふっと笑う。
その表情はすぐに寂しげな笑みにかわり、俯いた。

「……もしかして、好きな人の事で悩んでんのか?」
「へ?」
「前言ってただろ、好きな人がいるって。あれさ……俺には、教えてくれねえんだな」

目に見えて沈んだ様子の。
これはなんと説明したらいいんだろう。バカなオレが回りくどいこと言ったって余計不審がらせるだけだ。なら、やっぱり正直に言うのがいいだろう。

お前のことを恋愛感情で好きだと?
言ってどうする。今まで何度好きだと伝えても、伝わらなかっただろ。

いつまでこんなもどかしい立ち位置でいるつもりなんだ、オレ。






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