第18章 知ってたまるか
「なー、、お前知ってる?千冬の好きな人」
「……いや、知らねぇ」
「マジで!?おいおい千冬、マブのにも教えてなかったのかよ!薄情なやつだな」
「〜千冬に彼女できて構って貰えなくなったらいつでも言えよ?」
「って結構可愛いとこあるもんなぁ。俺も遊んでやるぜ!」
そう言って肩に腕を回される。重い。退かすのも面倒に思い、無視して本の無機質な文字に視線を落とす。
「………おい、テメェら…」
普段聞いたこともないようなドスの聞いた声が重く響いて、何事かと視線を戻せば阿修羅のような顔でこちらを睨む千冬がいた。
お前ホントに千冬か。
「ゲッ!バ、バカお前!に触ったら殺されるぞ!!」
「やべッ…!わ、わりい千冬!そんな怒んなよ、あははは…」
「二度と触んじゃねーぞ」
そう言って今度は千冬に後ろから抱きしめられる。千冬の匂いがふわっと広がってドキッとする。
ん?ドキッとするってなんだ。
なんで?
「……千冬の好きな人ってなんじゃねーの?」
「案外ありえるな、それ」
「あはは、いくら千冬が可愛がってるつってもそれはねーだろ!」
「そうかなー?」
チャイムが鳴り、みんな席へ戻り始める。
千冬も例に漏れず、またあとでな、と耳元で囁き戻って行った。
次の教科はなんだったか、えっと、確か、そう、数学だ。教科書と、ノートと、それから、
それから
俺、
千冬に好きな人がいるのが嫌だって思った。
最低だ。友達なんだから応援してやるべきなのに、なんでこんなに寂しいのだろう。悲しいのだろう。俺っていつからこんなにワガママになったんだ?
全部、千冬のせいだ。