第3章 友達
『くんすごいわ!絶対音感があるのね!』
『絶対…音感…?』
『ええ、そうよ。あなたは特別なのよ』
『そう…かな……』
街を走る車の音も
風を送り込むエアコンの音も
楽しそうな笑い声も
全部が"音"として脳内に送り込まれる。
『ねえ、それうるさいからやめてよ』
『え?遊んでるだけじゃん』
『でも、音がうるさくて頭が痛いんだ』
『ふーん…じゃああっちで遊ぶね』
ごめん、違うんだ。
ただ音がごちゃごちゃで頭が痛いんだ。
いかないで。
「ッ…………」
夢を見た。何度も繰り返し見た夢だ。
皆が、俺の周りから遠ざかっていく。
それならもう、最初から俺は1人でいい。
「おはよう、」
「うるせえ、話しかけてくんな」
「はは、相変わらずだなお前」
周りの奴らがギョッとして一斉にこっちを見る。
「おい、千冬が根暗のに挨拶したぞ」
「しかもうるせぇって言われて笑ってる…」
「に挨拶してあげるなんて千冬くん優しい!」
その言葉はきっと、にも聞こえている。
「お前ら、ごちゃごちゃうるせえよ。普通に挨拶しただけだろ」
「あ、ああ…悪ぃ……」
横目でを見ると、本人はさして気にしていない様子で、本を読んでいた。
「わるい、気分悪かっただろ?」
「別に。慣れてる」
「………」
"慣れてる"
その言葉が、とてつもなく悲しかった。