• テキストサイズ

【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第17章 その気持ちの名前は知らない





クラスの男子全員が固唾を飲んで見守る中、スタートのホイッスルが鳴り響く。
千冬と町田はほぼ同時にスタートを切った。

「………千冬」

走るあいつの姿をみて、無意識に名前を呼んでいた。

なんてかっこいいんだろう。




「あ………」


千冬が町田を追い抜いた。


速い。







「松野 6.4!町田6.6!」





ああ、太陽の光が眩しいな。










「!」

走り終わった千冬はタイムを確認することもしないまま、俺の元へ駆け寄ってきた。

「お疲れ様、千冬」
「おう、もな。何秒だった?」
「聞くなよ!馬鹿にしてんのか?」
「してねえって!好きな人のことはなんでも知りたいじゃん」
「言い方」

その言い方は間違いなく誤解を招くぞ。

「千冬、足速すぎ」
「あ、見てたの?」
「そりゃ、お前と町田が走るならみんなみるだろ」
「はは、よくわかんねーけど。オレかっこよかった?」

よく晴れた青空の下。
なーんてな、と笑う千冬の姿は、まるで漫画の主人公だ。
はらりと千冬の髪を揺らす風さえも、彼の味方だ。

「…かっこよすぎだ、馬鹿」
「……え」
「あーもう、お前反則…わけわかんねえ」

なんだか急に、千冬の顔を見るのが恥ずかしくなった。照れくさいというか、落ち着かないというか。


きっと、照りつける太陽が俺の胸を焦がすせいだ。


「お、俺高木のとこ戻る!」
「ちょ、おい、!!」


ただ、友達として尊敬してるだけ。
同じ同性として、かっこいいと思った。それだけ。
それでも違和感のある、名前も知らない感情を取り払うように、誰もいない場所で一人頭をぶんぶん振った。








/ 103ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp