第16章 息
「!!もう、この子ったら…東京ついたわよ!」
「オレおぶります。俺のリュック持ってもらえますか?」
「ごめんね、松野くん。お願いしてもいいかしら」
「いえ。頑張ったから疲れてるんすよ、コイツ」
新幹線で爆睡したは、東京駅についたというのに泥沼のように眠っており、まったく起きる気配がない。
を背負い、改札を出る。
今タクシー呼んだから、申し訳ないけど来るまでもう少し背負ってあげてけれる?と本当に申し訳なさそうに再度頼まれた。
「オレ、こいつのこと背負ってんの嫌じゃないっていうか…だから、いいんです。軽いし」
「松野くん…」
「後ろから聞こえてくるコイツの寝息が、ずっと、いつまでも、心地いい」
言った後に、こいつの母親に何言ってんだと内心焦ったが、そっか。とだけつぶやき、全てを悟ったように微笑むばかりでそれ以上何も言ってこなかった。
「ん、寒…」
「あ、起きた?」
「、もう東京着いたわよ!」
「え、あ……?なんでおんぶされてるんだ」
「起こしても起きねーからだよ!」
「そうか……はあ、疲れた。まだ降りたくない」
「まあ!ったら!赤ちゃんじゃないんだから降りなさい!」
「…いやだ」
「はは!いいっすよ、このままでも。、もうちょい寝るか?」
「んー…起きるけど。歩きたくないし、あったけえからこのままがいい」
「もう…ごめんね、松野くん。この子、いつからそんな甘えん坊になったのかしら」
少し冷たい夜風が吹き抜けて、心地いい。
なんでもない東京駅の景色が、いつもより鮮やかに映った。